IAMAS(イアマス)は、メディアアートやデザイン、コンピューター・サイエンスなどを学べる公立の教育機関である。1996年に開校した岐阜県立国際情報科学芸術アカデミーを前身とし、2001年から情報科学芸術大学院大学を併設、2013年からは大学院のみとなった。同校は、少人数の学生に対して幅広い領域にわたる教員を配して、アーティストや音楽家、デザイナーをはじめプログラマー、エンジニアなど、国際的に活躍する人材を輩出してきた。

初代学長を勤めた坂根厳夫氏(1930年−)は、1950年代から朝日新聞記者という立場から「アート&サイエンス」をはじめとした境界領域をいち早く紹介し、国際的に執筆や展覧会開催に従事しながら、メディアアートを支えてきた功労者でもある。1990年から慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)で教鞭をとった後、IAMAS開校に貢献した。坂根氏はIAMAS開校前から岐阜県におけるIT立県構想の一環として、メディアアートの国際展「インタラクション(the Interaction)」(1995−2001年まで4回開催)の企画に従事した。2002年に坂根氏が退官してからは、「インタラクション」は「おおがきビエンナーレ」と改称して継続されている。

また、IAMASは開校当初からアーティスト・レジデンス・プログラムを実施し、国際的に活躍する著名なメディア・アーティストを国内外から招聘してきた。近年は、学外の組織や社会に開かれた「IAMAS Labo」の活動や、リンツ美術工芸大学(オーストラリア)やシュリシティー芸術デザイン技術学校
 
(インド)などの海外の教育機関との交換留学制度を通して、国際色豊かでユニークなカリキュラムやプロジェクトを展開する。例年、卒業制作展は若手アーティストや人材発掘の場として注目が集まる。

IAMASは、これらの活動に関する全ての出版物をPDF化して「IAMAS BOOKS」として、オンラインで昨年から公開している。また、「IAMAS ARCHIVE」では当時制作されたウェブサイトを中心に公開する。地方の公立学校において、小規模ながらもダイナミックに展開してきた先駆的な活動を一望できる。これら取り組みは、開校から15年周年を迎え、バージョンアップが求められると推察される同校の新たな展開の促進につながるのではないだろうか。今後もアーカイブが順次追加されていくようだが、プログラムやチラシなどの細かい印刷物、学生や教員個人の活動に関する資料なども加わるとより豊かなアーカイブが構築できそうだ。

メディアアートは長期に渡って作品を鑑賞することが難しいため、展覧会カタログなどの出版物は作品と同様に重要な資料と位置づけられる。また、教育機関が出版した印刷物は著作権処理の手続きなどが他機関と比較してスムーズだと考えられる。IAMAS BOOKSに続いて、メディアアートに関する資料のデジタル化と公開の重要性が認知され、広く普及していくことを期待したい。

IAMAS BOOKS
http://www.iamas.ac.jp/iamasbooks/

IAMAS ARCHIVE
http://www.iamas.ac.jp/J/archive.html