本書は、かつて多数のゲームソフトを発売したメーカー、ジャレコの歴代開発タイトルを年代順に紹介し、解説文や各種資料・データベースとともにまとめたものである。
掲載された作品は、アーケードや家庭用、PCを問わず、すべてのプラットフォームが対象となっており、そのほとんどがカラー写真付きで紹介されている。編集・制作を担当したのが、現在ジャレコの各種ゲームの権利を保有している、株式会社シティコネクションということもあり、今ではまず目にする機会がないであろう、貴重なアーケードゲームの筐体写真やパンフレット、さらにはテレビCMの映像までもが豊富に掲載されている。
各タイトルの解説文には、キャラクターの名称およびその設定や、ゲーム上で役立つテクニックなどが詳細に書かれており、読み物としてはもちろん、自分でゲームを遊ぶ際の資料としても活用ができる。また、歴代ジャレコ作品の中から84曲のBGMを収録したゲームミュージックCDが付属しているので、目だけでなく耳でも楽しめるようになっているのも、ゲーム好きには実に嬉しいところだろう。
元ジャレコのスタッフが、昔のゲームをどのようにして企画・制作をしたのかを語った、各種インタビュー記事も非常に面白い。「アーガス」「燃えろ!!プロ野球」など、当時の有名タイトルの開発を手掛けた吉田晄浩氏をはじめ、サウンドコンポーザーや開発者同士の座談会形式によるインタビューや、元営業職で「ファミッ子大集合」のテレビ番組に出演し、宣伝を担当していた通称「菊地名人」こと菊地博人氏の証言も読むことができる。
とりわけ素晴らしいのが、ジャレコの創業者である金沢義秋氏のインタビューである。会社創業の経緯だけでなく、ファミリーコンピュータブーム期に、サードパーティとして任天堂と契約した当時のエピソードなど、1970〜80年代にかけてのゲーム業界の事情を詳細に語っている。また、「エクセリオン」「忍者じゃじゃ丸くん」など、初期のファミコン用人気ソフトと、アーケードゲームとでは根本的に開発手法が違うことを説明するなど、当時の歴史を学ぶうえでも重要な証言が多数掲載されている。
長年のゲームファンにとっては、読み物として楽しめるのはもちろん、資料的価値の高いコレクションアイテムとしても十分に満足できるだろう。同時に、ジャレコ作品とその当事者を通じて、ゲームの文化・産業史を学べるという点でも非常に貴重な一冊となっている。
『ジャレコ・アーカイブス』
編著:シティコネクション、出版社:実業之日本社