早稲田大学坪内博士記念演劇博物館では、2011年9月21日から2012年2月4日まで現代演劇シリーズ第38弾として「LIFE with ART 〜ダムタイプ『S/N』と90年代京都〜」が開催されている。本展覧会は2010年に京都精華大学情報館メディアセンター主催でおこなわれた展覧会「LIFE with ART─受けとめ、そして、渡す人─」の一部を再構成したものである。

京都を拠点に活動するアーティストグループであるダムタイプは1984年に結成され、パフォーマンスやインスタレーションなど多様な表現活動をおこなう。1994年に発表したパフォーマンス「S/N」は、リーダー的存在であった古橋悌二氏によるインスタレーション《LOVERS—永遠の恋人たち》と合わせて高い評価を受けている。また「S/N」は、1992年に古橋氏が自らのHIV感染を公表した出来事と、90年代の京都におけるジェンダーとセクシャリティをめぐるさまざまな社会的活動と密接に関係している。

本展覧会は「S/N」の制作やパフォーマーとして関わった12名のインタビュー映像、インスタレーション《S/N》や《LOVERS—永遠の恋人たち》などの資料、90年代京都での社会/文化活動の資料によって構成されている。これらのアーカイブ資料を通して「S/N」の制作過程における特殊な背景と、発表後のさまざまな影響を客観的に眺めることができる。本展覧会は「90年代京都」を読み取り「S/N」を再評価する機会を与えると同時に、表現活動とその社会背景をどのように記録/保存/活用して次世代へ引き継いでいけばよいかを考える貴重な機会となるだろう。

2011年10月28日には、関連イベントとしてシンポジウム「〜『S/N』から“発明”する社会と繋がる方法論〜」を開催予定。

(明貫 紘子)

現代演劇シリーズ第38弾「LIFE with ART 〜ダムタイプ『S/N』と90年代京都〜」

主催:早稲田大学坪内博士記念演劇博物館

協力:京都精華大学情報館メディアセンター LIFE with ARTアーカイブ・プロジェクト

http://www.waseda.jp/enpaku/special/2011dumb_type.html