日本国内におけるメディアアートに関連するオーラルヒストリーの実践を3件紹介する。

「日本美術オーラル・ヒストリー・アーカイヴ」は、日本の近現代美術に関心をもつ大学の研究者や美術館の学芸員ら15名で組織された非営利団体。美術家をはじめ、批評家、学芸員、画廊主、編集者、行政担当者など、広範に日本美術の関係者に対して聴き取り調査をおこなう。語り手の生い立ちから現在の活動までの詳細なインタビューを録音して文書にしたものを公的機関に所蔵し、一般公開して研究・調査などの目的に供することを目指している。ウェブサイトでは山口勝弘氏(アーティスト)、荒川修作氏(アーティスト)ら29名のインタビューの書き起しを閲覧することができる。

NTTインターコミュニケーション・センター[ICC]では、映像アーカイブ「HIVEコーナー」が設けられており活動記録やコレクション作品などを閲覧することができる。コレクションの一つとして科学者、アーティスト、建築家、音楽家、映像作家などに対しておこなわれたインタビュー映像「ICCインタヴュー・シリーズ」42件と、「HIVEインタヴュー・シリーズ」7件がある。これらのインタビュー映像はウェブサイトで一部閲覧できるほか、ICCオープン記念出版として刊行された『マルチメディア社会と変容する文化』シリーズ(全3冊、NTT出版)において文書化された「ICCインタヴュー・シリーズ」を読むことができる。

NPOビデオアートセンター東京(VCT)は、「ドキュメンタリープロジェクト」としてビデオアート黎明期のアーティストへのインタビューを2007年からおこなっている。今年、これらのインタビューの集大成として、アーティスト15名と関係者の証言と作品紹介で綴るドキュメンタリー映像『キカイデミルコト-日本のビデオアートの開拓者たち』を制作。2011年11月に公開予定。本作品の監督でありVCT代表の瀧健太郎氏(アーティスト)らが運営するウェブサイト「RADIO / UPSTREAMING」では、阿部修也氏(ナム・ジュン・パイクの共同制作者)、マイケル・ゴールドバーグ氏(ビデオアーティスト)、小林はくどう氏(ビデオアーティスト)、山口勝弘氏(アーティスト)らのインタビューを音声で試験的に公開している。

日本美術オーラル・ヒストリー・アーカイヴによれば、オーラルヒストリーは「多様な考えが絡み合う歴史の厚みを明らかにするもの」であり、オーラルヒストリーの価値は「歴史を研究しようとする者がそれぞれの関心に基づいて能動的に活用して初めて高まっていくもの」という。新しい分野であるメディアアート分野は、資料収集と公開が十分におこなわれていない現状がある。文献資料を補完するオーラルヒストリーの実践が広くおこなわれ、メディアアート史の研究が進むことを期待したい。

日本美術オーラル・ヒストリー・アーカイヴ

http://www.oralarthistory.org/

ICCインタヴュー・シリーズ/HIVEインタヴュー・シリーズ一覧

http://hive.ntticc.or.jp/about/index_list_interview

HIVE

http://hive.ntticc.or.jp/
 

ビデオアートセンター東京(VCT)ドキュメンタリープロジェクト

http://www.vctokyo.org/jp/projects/