2013年3月13日、東京・青山の青山学院アスタジオにて、「アニメーション・アーティスト・イン・レジデンス東京2012-2013 成果発表会」が開催された。このイベントでは、文化庁委託事業「平成24年度海外メディア芸術クリエイター招へい事業」として一般社団法人ジャパン・イメージ・カウンシルが主宰する「アニメーション・アーティスト・イン・レジデンス東京2012-2013」の成果が発表された。

「アニメーション・アーティスト・イン・レジデンス東京」は、海外で活躍する若手のアニメーション作家を日本に招へいし、招へい者は日本で国内作家との交流や作品制作などを行うというものである。3年目を迎える今年度は、過去最高となる43カ国、112名の応募があり、以前のニュースでもお伝えした通り、アメリカからケイレブ・ウッド氏、フィンランドからエッリ・ヴオリネン氏、ベルギーからエマ・ドゥ・スワーフ氏が選出され、2013年1月5日に来日していた。

今回のイベントは2部構成で、第1部では招へい者3名による成果発表のプレゼンテーションが、第2部では滞在期間中に招へい者の指導にあたったアニメーション作家の古川タク氏、同じくアニメーション作家で多摩美術大学教授の野村辰寿氏、プロデューサーで東京藝術大学教授の岡本美津子氏とジャパン・イメージ・カウンシルの澤隆志氏の4名による座談会が行われた。

第一部のプレゼンテーションの様子をお伝えする。

ケイレブ・ウッド氏が日本滞在中に制作したのは『さよならウサギ、ホップホップ Goodbye Rabbit, Hop Hop』(仮)という作品だ。この作品は、公園で野生のウサギを見つけその姿を追う様子を、様々なテクニックのドローイングによってアニメーション化することで、人工の世界と自然の世界との関係性を問うものだ。ウッド氏は、この作品の準備として、数々のドローイング・テクニックの実験と、滞在先のホテルの近くにある代々木公園を中心とした、街中の自然の光景のロケハンと写真撮影を行うことで、作品のためのインスピレーションを得ることを重点的に行ったという。また、新作のサウンドトラックに使用されるカリンバの演奏や、アスファルトに散らばる鳥の糞の形状のユニークさに注目し、散歩中に撮影した糞の写真を用いて即興的に制作した『バードシットBird Shit』(Vimeo上で鑑賞可能)も特別に上映された。

エッリ・ヴオリネン氏は、来日以前から制作していた自伝的ドローイング・アニメーションの新作『靴下通り8番地 Sukkavartaankatu 8』(仮)の背景美術制作と音楽の録音を主な日本での作業として行った。背景美術に関しては、浮世絵を参照することを考え、都内の美術館・博物館での調査・資料収集の後、浮世絵のもつ無重力感・浮遊感を生かした背景のデザインに辿り着いたことが報告された。また、来日後に知り合った日本のミュージシャンとのコラボレーションで作品の音楽が録音された。『靴下通り8番地』は、音楽がラフミックスの段階だったが上映が行われ、背景画と音楽という日本での具体的な成果を実際に見ることができた。

毛糸を用いた人形アニメーションを作るエマ・ドゥ・スワーフ氏は、今回、共同制作者のマーク・ジェイムズ・ロエルズ氏とともに来日し、ドワーフなど日本の人形アニメーションのスタジオの訪問や、CALFや東京藝術大学大学院アニメーション専攻の学生を中心とした若手作家との交流などを通じて、19世紀末から20世紀初頭の植民地時代のアフリカを舞台とした新作『ザ・マグニフィセント・ケーキ The Magnificent Cake』(仮)の構想を練った。今回の来日中には、この新作のためのスケッチ的な位置づけとなる1分間の作品のための作業とそのインスピレーションとなる資料の収集を行っており、畠山直哉氏の写真や東京都写真美術館での日本の過去の写真の展示から、大日本プロレスリングの観戦など、様々なソースから新作のためのアイデアが集まったことが報告された。プレゼンテーション内では、1分間の作品のビデオコンテや、滞在中のホテルでテストとして撮影されたウールを用いた爆発のアニメーションなどの映像も披露された。

第二部の座談会では、今年度の招へい者たちが、例年と比べ具体的なプラン立てがしっかりしており、それでいて日本での数々の出会いや発見に応じてアイデアを大胆に変更し進化させていくという柔軟性も備えていたと評価されていた。

今年度招へいされた面々には、以前より国際的に評価の高かった作家が揃っていた。今回の滞在を通じて作成された作品も、完成予定の2013年12月以降、映画祭シーンを賑わせていくことが予想される。

招聘作家たちは、3月18日、帰国の途に着いた。

「アニメーション・アーティスト・イン・レジデンス東京2012-2013」成果発表会
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