東京・六本木にある森アーツセンターギャラリーでは、2013年10月12日から2014年1月5日にかけて、「スヌーピー展」が開催されている。
「スヌーピー」(原題『ピーナッツ』)は、1950年から連載され、今でも世界中にファンを持つ名作だ。作者のチャールズ・M・シュルツ氏(1922-2000)は亡くなる直前までこの作品を描き続けた。
丸みを帯びたキャラクターたちが有名だが、晩年には手の震えから、揺れるようなペンタッチで描くようになった。その線を見て、他のマンガ家たちはかえってその味わいをうらやんだという。わが国のマンガの“神様”手塚治虫が、かつて放映されたTVドキュメンタリーのなかで、加齢によって線が揺れることを忸怩たる思いで告白していたのとは対照的なエピソードだ。
本展覧会は大きく4つのパートに分けられており、▽シュルツ氏の生涯▽アトリエでの創作風景▽年代による作品スタイルの変遷、および人気キャラクターたちの紹介▽『ピーナッツ』のフィギュアやアニメーションなどの関連世界、というそれぞれのテーマが、『ピーナッツ』の原画を読みながら理解できるようになっている。
このような展示構成が可能なのは、1万7千話におよぶという膨大な作品が、様々なテーマを扱いながらシュルツ氏の人生を色濃く反映させているからであり、なによりも、数コマで1話が完結するのが『ピーナッツ』の基本的な作品スタイルだからだろう。ひとつの額縁内で話が完結する新聞連載マンガの原稿は、複数ページを必要とする作品よりも、美術館での展示に向いていると言える。
今回の展示はキュレーションをシュルツ美術館が担当しており、しっかりとした解説とともに、約100枚の貴重な原画が貸し出されている。また、シュルツ氏が影響を受けた古典的諸作品の原画も合わせて展示されており、アメリカのマンガの歴史に興味がある人にとっても見逃せない展示となっている。
シュルツ美術館は、アメリカ合衆国カリフォルニア州のサンタローザに、シュルツ氏の死後2002年に開館した。正式名称を「チャールズ・M・シュルツ・ミュージアムと研究センター」(Charles M. Schulz Museum and Research Center)といい、その名の通り、アーカイブ機能を兼ねた研究センターが併設されている。
シュルツ氏とその家族はアメリカにおけるマンガ・アーカイブにも大きな寄与をなしてきた。初めは自前のスペースを持たなかったカートゥーン・アート・ミュージアム(Cartoon Art Museum)が、1987年にカリフォルニア州サンフランシスコに居をかまえられたのは、シュルツ氏の寄付のおかげであった。
また、最近でもオハイオ州立大学のビリー・アイルランド・カートゥーン・ライブラリー&ミュージアムの改築・移転費用として、未亡人のジーニー・シュルツ氏が100万ドル(約1億円)の寄付をしたうえで、「シュルツ・チャレンジ」を発足させた。これは、250万ドルを上限として、他から集まった寄付と同額の寄付をさらに行うことを約束したもの。例えば、ウィル・アイズナー氏(1917-2005)の遺族も25万ドルの寄付を行ったが、これに合わせてジーニー・シュルツ氏は同額の25万ドルをさらに寄付した。つまり、「シュルツ・チャレンジ」によって、最高600万ドルの寄付を得られる計算になる。なお、当初予定されていたビリー・アイルランド・カートゥーン・ライブラリー&ミュージアムの改築・移転費用は約2000万ドルだった。
「スヌーピー展」
http://www.snoopy-exhibition.jp
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