『図書館およびアーカイブにおけるグラフィック・ノヴェルとコミック』(Graphic novels and comics in libraries and archives: essays on readers, research, history and cataloging, 未邦訳, McFarland, 2010年)は、主にアメリカの図書館・アーカイブとマンガの関係を扱った論文集。
章立ては以下のとおり。(1)歴史(2)学校図書館(3)公共図書館(4)大学図書館(5)州立図書館/アーカイブ(6)利用者(7)命名と美学(8)メタコミックス/Webコミックス(9)目録作成(10)蔵書の評価。
日本とおなじように、アメリカにおいてもマンガを図書館に受け入れるかどうかは長いあいだ議論の的となってきた。だが近年では、アカデミックな評価の高まりをうけて、大学施設でのアーカイブがさかんにおこなわれるようにまでなっている。その現状を反映して、第4章の「大学図書館」に寄せられた論文の数がもっとも多い。
収集し整理するためにはその分野の歴史的知識が欠かせないものとなる。それだけでなく、その分野とアーカイブ施設との関係についても歴史的経緯を知っておく必要があるだろう。第1章の「歴史」ではそのような歴史を扱う。「日本の図書館における日本マンガ:歴史的概観(Manga in Japanese libraries: A historical overview)」という論文も載せられている。
そのほかにも、第7章の「命名と美学」では、アメリカにおけるマンガの社会的/文化的認知と深いかかわりのある「グラフィック・ノヴェル」という名称の命名について考察されている。第8章の「メタコミックス/Webコミックス」では、あらたな収集対象として近年浮上してきたインターネット上の資料が論じられている。また、第9章の「目録作成」は、図書館の専門家とマンガの専門家が、変革をむかえつつある図書館データベースシステムとどう向きあうかについて考えるよい入り口となるだろう。