京都国際マンガミュージアムで2014年3月15日から5月25日にかけて、「ヌーベル・バンド・デシネ展:フレンチコミックスでつながるアーティスト」が開催される。
「バンド・デシネ(略称BD)」とはフランス語で「マンガ」のこと。「ヌーベル」は、「ヌーベル・ヴァーグ」の「ヌーベル」、英語で言うところの「New」、つまりは「新しい」という意味だ。
今回の展覧会は、フランスの作家というよりは、フランスのコミック・シーンに関連の深い若手マンガ家を紹介するものだ。彼らのほとんどは、日本で名前すら知られていないだろう。いや、そもそもフランスでさえ、その作品がアニメ化されているジョゼ・パロンドを別にすれば、まだ有名であるとは言い難いほど、「新しい」。
彼らをつなげるのは、日本で発行されている小冊子「KUE(9)」である。くらしき絵本館から出版されているこのマンガ雑誌は、▽これまでに日本で翻訳されていないタイプのBDを刊行すること▽日本のマンガ雑誌の出版システムでBDを出版すること、を目的として創刊された。現在2号まで発行されており、3号目も予告されている。雑誌タイトルは「キュウ」と読む。フランスでマンガが「第九芸術」と呼ばれているところからとられた。
近年、フランスのマンガは日本において翻訳ラッシュとでも言うべき状況だが、そのラインナップがいささか偏っていることは否めない。もちろん、「正しい」ラインナップなど存在しないことも確かではあるが。
そんな現状のなか、「KUE(9)」が独自に行うセレクションは、一見フランス本国との情報の乖離をさらに進めてしまうかのように思われるかもしれない。しかしながら、視点を変えれば、それはフランスよりもさらに「新しい」試みなのだとも言える。この試みが説得力を持つのは、何よりも掲載されている作品が、これからフランスで(あるいは世界で)活躍する姿を容易に想像させるレベルにあるからだろう。それはとりもなおさず、「KUE(9)」のセレクション・センスの良さによるところが大きい。
この展覧会に合わせてイベントも予定されているので、興味のある方はリンク先を見てほしい。「今のところ」日本でしか見られない展覧会だ。
ヌーベル・バンド・デシネ展:フレンチコミックスでつながるアーティスト