日本アニメーション学会は2014年より新たに「日本アニメーション学会賞」を創設し、その第1回受賞作に須川亜紀子氏の『少女と魔法 ガールヒーローはいかに受容されたのか』(NTT出版、2013年)を選んだ。また、特別賞には、日本のアニメーション史研究の先駆者として知られる渡辺泰氏が選ばれた。

日本アニメーション学会賞はアニメーション研究者の顕彰と奨励を目的に設立された。「創設に際して」という一文で、同学会会長 の小出正志氏(東京造形大学教授)は、同賞が「研究者や教育者・批評家などへの顕彰・奨励の機会はごく限られたものである」という現状を踏まえ設立されたものであるとその目的を記し、「本学会がこの賞を設けることにより、これまで顧みられることの少なかった研究者の顕彰、特に若手研究者の奨励を実現させたことは、学会としての社会的使命の一つを果たすことに繋がるのではないかと考えます」と同賞の役割を説明している。

須川氏の『少女と魔法』は、テレビアニメにおける「魔法少女もの」が少女たちのジェンダー・アイデンティティの形成過程に影響を及ぼしてきたかを主題とした内容で、テキスト分析とオーディエンス調査という大きく二つの方法論で「魔法少女もの」を総合的に分析した。先行研究への十分な調査や客観的な研究手法の吟味と多角的な分析など学術研究として優れていることに加え、一般読者にもわかる平明さも併せ持っているところが高く評価された。

特別賞の渡辺氏は、刊行から40年を経た今でも基礎文献として読まれる『日本アニメーション映画史』(山口且訓氏との共著、有文社、1977年)の著者などとして知られる。贈賞理由は「日本アニメーション映画史』(共著)をはじめ、日本のアニメーション研究発展における、氏の永年の貢献とその業績に対して」。

日本アニメーション学会
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