以前にもお伝えしたように、フランスのアングレームにある「マンガとイメージの国際都市」(略称CIBDI)では、それまで紙媒体で発行されていたマンガ研究誌「第9芸術」(Neuvième art)を、「第9芸術 2.0」(Neuvième art 2.0)と命名し直し、web上で刊行する形式へと移行させた。

その中のコンテンツのひとつとして、フランス語による「マンガ用語・概念事典」を作成するプロジェクトが現在進行中だ。

Dictionnaire esthétique et thématique de la bande dessinée」と名付けられたこの事典では、マンガに関する専門用語や、技法関連語、描かれるテーマなどがアルファベット順に並べられ、リンク先でそれぞれについてのかなり長文の論考を読めるようになっている。

事典の紹介ページにある分類に従うならば、選ばれた項目は、▽一般用語(単行本、吹き出し、主人公など)、▽技法用語(ペン入れ、カラー、ページ・レイアウトなど)、▽ジャンルに関する用語(ファンタジー、エロ、スーパー・ヒーローなど)、▽テーマに関する用語(ホモセクシュアリティー、宗教など)、▽美的概念に関する用語(スタイル、間テキスト性、リアリズムなど)、▽文化史に関する用語(作者、アヴァンギャルド、検閲など)、に大きくは分けられるようだ。

項目数は全部で120から150程度用意されているそうで、現在のところそのうちの約50項目が掲載されており、開始年である2012年から数えて、3年から5年ほどの時間をかけて完成させることが目指されている。

今回、その事典に新たな二項目が追加された。執筆者のひとりであり、今回のプロジェクトの中心人物でもあるティエリ・グルンステン氏による、「physiognomonie(観相学)」と「présence(現前性)」というマンガの登場人物に関する二項目だ。

この事典において、全ての解説自体はフランス語で記述されているとはいえ、その論考対象はフランスのマンガだけに限っていない。「physiognomonie(観相学)」では日本の顔文字が考察されているし、そもそも項目のひとつとして、「manga(日本マンガ)」が別に立てられていることからもそれは明らかだ。その他の項目でも、例えば「contre-culture(カウンター・カルチャー)」では、日本のマンガ家、佐々木マキ氏の図版が用いられている。

実のところ、CIBDIがweb上で公開している辞書・事典類は全部で三つある。この「マンガ用語・概念事典」に加え、「マンガ用語辞典」と「マンガ用語各国対照表(仏語・英語・独語・西語・伊語)」も用意されているので、興味のある方は覗いてみてはいかがだろうか。

「マンガ用語・概念事典」に新たな項目が追加
http://www.citebd.org/spip.php?article6699