早稲田大学川口芸術学校が公開講座として「メディアアートの源流−ビデオアートの黎明期を探る−」と題し、記録映画『キカイ デ ミルコト —日本のビデオアートの先駆者たち— 』(HDV、75分)を上映し、監督の瀧健太郎氏(アーティスト、早稲田大学川口芸術学校講師)によるトークイベントを早稲田大学にて2011年12月15日に開催する。

1950年代から1960年代にかけて、コンピュータアートやコンピュータ・グラフィックス(CG)の動向と平行して、ビデオアートの前夜ともいえる活動が展開された。松本俊夫氏に代表される実験映画やエクスパンデッド・シネマ(拡張映画)の活動では、ビデオとフィルムのメディア特性について強く意識されていた。1960年代初頭は、現代美術家のナムジュン・パイク(1932-2006)に代表されるテレビの映像信号を素材にした作品が発表され、1960年代後半から70年代にかけて電子画像処理で加工・変調された作品、即時性やビデオ・フィードバックを取り入れた作品などが多く展開された。とりわけ、1965年に世界初の民生用ビデオとカメラが発売され、1967年にはポータブル・ビデオカメラが米国で発売されて以降、個人による映像制作がより身近になった。

1970年代には、フェミニズム的立場で制作をおこなう女性アーティストをはじめ多くのアーティストにとって、ビデオは自由で開放的なメディア(オルタナティブ・メディア)として位置づけられ、映像制作だけではなく、インスタレーション、パフォーマンス、アクティビィズム、放送といった多様な表現活動で利用された。

記録映画『キカイ デ ミルコト—日本のビデオアートの先駆者たち—』は、阿部修也氏(ナムジュン・パイクとコラボレーションしたエンジニア)、「ビデオ・アース」を1971年に設立した中嶋興氏、1972年より「ビデオひろば」で活動した中谷芙二子氏、小林はくどう氏、松本俊夫氏、かわなかのぶひろ氏、山口勝弘氏らアーティストやキュレータなどの関係者の証言をもとに、「もう一つの映像史」としてメディアアートの源流とその将来を探るドキュメンタリー作品である。作品解説によれば、「『ビデオ (Video)』の語源であるラテン語の意味『私は見る』をキーワード」に本作品が制作されたという。監督の瀧氏が本作品の制作を通して「ビデオアートの黎明期」から何を見いだしたのか、トークイベントに期待が寄せられる。

早稲田大学川口芸術学校が公開講座「メディアアートの源流−ビデオアートの黎明期を探る−」

主催:NPO法人VCT/ビデオアートセンター東京

協力:早稲田大学川口芸術学校

助成:日本万博博覧会記念機構

http://wasedaart.waseda.ac.jp/news/111116_1.html