武蔵野美術大学に併設される図書館展示室にて、2011年12月24日まで展覧会「博物図譜とデジタルアーカイブⅣ」が開催されている。本展覧会は、武蔵野美術大学美術館・図書館がコレクションする貴重書と荒俣宏氏の旧蔵コレクションによる18世紀以降の博物図譜(動植物図譜、航海記、地図、民族学的図譜、解剖図譜など)の研究成果としておこなわれる。2008年より同美術館・図書館と造形研究センター近代デザイン資料研究プロジェクトが共同で博物図譜の図版とテキスト全ページにわたって、高解像度スキャニングデジタルアーカイブ化を進めた。さらに2010年には、独自に開発したタッチパネル式高解像度閲覧システムによって、直接触れることが難しい貴重書を全ページの細部にわたり閲覧することが可能となった。展覧会会場では、タッチパネル式高解像度閲覧システムに加えて、iPadを利用した新たな閲覧システムも体験することができる。
展覧会趣旨「博物学の時代—ひとは世界をどのように見、記述して来たか」によれば、本展覧会は「実物の博物図譜とデジタルアーカイブから芸術と科学の時代の宇宙観、世界観、価値観に対する当時の人々の創造性と探究心を読み解き、さらに今日的な『視覚の記述』の観点から博物図譜の歴史的な意味を再検証」するものであるという。
デジタルアーカイブは「視覚の記述」を拡張するだけでなく、閲覧するスタイルの多様化や資料を享受する人々の拡大へつながるといえる。今後、これらのデジタルアーカイブの活用方法に対するアプローチに期待したい。一方、デジタル化されたアーカイブを次代へ継承していくうえで、デジタル技術がメディウムの脆弱性を抱えていることを忘れてはいけない。
武蔵野美術大学美術館で開催されている展覧会「杉浦康平・脈動する本:デザインの手法と哲学」(2011年12月17日まで)と合わせて訪れたい展覧会だ。
「博物図譜とデジタルアーカイブⅣ」展 2011年12月24日まで
主催:武蔵野美術大学美術館・図書館
共催:武蔵野美術大学造形研究センター