今年もフランスのアングレームで、2012年1月26日から29日の4日間にわたり、「アングレーム国際マンガ・フェスティバル」がひらかれる。このフェスティバルは今回で第39回目をむかえ、今やヨーロッパ最大のマンガイベントに成長している。今年のポスターは、前年の大賞受賞者であるアート・スピーゲルマン氏の手によるもの。ホームページの「歴史コーナー」では、第1回目からのフェスティバルの簡単な説明とともに各回のポスターが掲載されており、ながめているだけでも楽しい。

フェスティバルは町全体を使っておこなわれ、参加者はバスで移動してお目当てのイベントや展示を訪れる(ちいさな町なので自分の足で移動できないこともない)。訪れる人々は最初にマップとバスのルート図を手に入れることになる。町全体を利用した、まさに町ぐるみのお祭りと言えるだろう。先日紹介したグルー氏の回想録『記憶の片隅』には、フェスティバルがはじまった当初、レストランの人たちがあまりの人の多さと日曜日に店を開けることに抗議の声をあげたというエピソードがあったが、その時から考えると隔世の感がある。

2011年の数字だが、約30の展示がおこなわれ、1600人の作家が参加し、215の講演やワークショップがひらかれ、110の演劇や上映会が催されたそうだ。さらに、アングレームの「マンガとイメージの国際都市」(CIBDI)や地元の公的機関の交渉をうけもつフェスティバル協会(L’Asocciation du Festival)など、メインになってフェスティバルを運営している9eArt+とは別の組織が企画するイベントも同時期に開催されている。

たとえば、前年度の大賞受賞者のスピーゲルマン氏に捧げられた展覧会は、フェスティバルを主催する9eArt+(実行委員長はフェスティバルのアートディレクター、ブノワ・ムシャール氏)によるもののほか、CIBDI(実行委員長はティエリ・グルンステン氏)によるものも開かれる。これはさすがに両方とも公式プログラムに記載されているのだが、CIBDIによってひらかれるスピーゲルマン氏についてのシンポジウムは、公式プログラムに記載はないので、CIBDIのホームページを見ないとわからない。あるいは、以前にここで紹介したことのある「マンガ、イラストレーション、カリカチュア保存美術館と図書館の国際シンポジウム」も、フェスティバルのプログラムだけを見ていると、見逃してしまうことになる。

フェスティバルのプログラムだけでも全部見るわけにはいかないので、参加者はタイムスケジュールを睨みつつ、いくつかのイベントに的をしぼらなければいけない。

フェスティバル主催者おすすめの「確実に見ておくべき」企画は、アート・スピーゲルマン展テベオ:スペインのマンガ展大手・中小・独立系の出版社および同人誌の展示販売スタンド(ブース)若手作家の館各国の作家たちの講演ジャン=クロード・ヴァニエのコンサート(オード・ピコーのイラストつき)エスパス・フナック(フェスティバルの重要なパートナーである、大手本屋チェーン「フナック」のスペース)の7つである。

フェスティバルの第1回目には、アメリカのハーヴェイ・クルツマン氏も参加しており、国際の名にふさわしくつねに外国の作家、作品にひらかれているのも、このイベントの特徴のひとつだ。今年は、前述したスペインのマンガ展のほかに、スペシャル台湾:台湾コミックスの大洋展がひらかれる。アジアからはすでに中国、韓国、香港、日本などがとりあげられてきているが、台湾のマンガはあまりよく知られているとは言い難いので興味深い。

アジアのマンガについては、エスパス・マンガジー(MangaAsie: Manga+Asie)というスペースが特別に設けられる。マングレーム(Mangoulême: Manga+Angoulême)という特設サイトも開設されているので要チェックだ。

外国のマンガについては、EU(欧州共同体)のマンガをテーマにした展覧会や、スウェーデン・マンガの展覧会もひらかれる。

個人作家の展覧会もひらかれており、なかでも1980年の大賞受賞者であるフレッド氏をテーマにした魔術師フレッド展はぜひ見ておきたいところだ。

そのほかにも、子供むけスペース、サイン会、ライブペインティング、コンクール、上映会、上演会など、いくつもの企画が予定されているので、詳しくはホームページのプログラムや、テーマごとに分けられたアラカルトを見てほしい。

さまざまな賞やコンクールの受賞者もフェスティバル期間中に発表される。とくに大賞は、前年度の受賞者が次年度の選考委員長をつとめることになっているので要注目だろう。受賞作品のうちで気に入った作品、作家があれば、すぐにエスパス・フナックのスタンドなどで買える。ただし、パリで買えるものも多いので荷物の増えすぎにご注意を。

アングレーム国際マンガ・フェスティバル

http://www.bdangouleme.com/

プレスリリース[PDF]

http://www.bdangoulemepro.com/upload/pro/colonne_blocs/documents/26_5_2012-fiches-ddpv02we_386.pdf