2014年2月5日より開催される文化庁メディア芸術祭をはじめとして、大学等の各種卒業制作展に至るまで、年度末にさしかかるこのシーズンはメディアアートの作品が展示される機会が多い。その一方で、この季節は国外のコンペティションへの応募のシーズンとも言える。中でも毎年数多くの応募を集めるのが、1987年から続くPrix Ars Electronica(オーストリア・リンツ)である。今や世界でも最も古く、そして最も権威あるメディアアートコンペティションの一つである。例年3月初旬から中旬あたりに締め切りが設定されるこのコンペティションだが、今年はその募集形態に変革が施されたので取り上げたい。
Prix Ars Electronicaのウェブサイトによると、大きな変化として、従来毎年それぞれ募集が行われていたInteractive ArtとHybrid Artカテゴリー、そしてDigital Musics & Sound Artと Digital Communitiesカテゴリーが隔年で交互に募集されることになった。つまり、Hybrid ArtとDigital Musics & Sound Artの両カテゴリーは2014年の募集はなく、来年2015年まで待つ必要がある。なお、その他のComputer Animation/Film/VFX、u19 –CREATE YOUR WORLD、および [the next Idea] voestalpine Art and Technology Grantは例年通り毎年募集が継続されるとのこと。今回の変革は、より高い作品への注目と審査品質を求めるためということだが、年々分野規模が拡大し、表現の形態も多岐に及ぶ中で、この措置がどのように作用するのか注目である。応募を検討する場合にはカテゴリーの選択に注意したい。
その他、新たなカテゴリーとしてVisionary Pioneers of Media Artが新設されることも発表された。これは、メディアアート分野の礎を築いた先駆者や、その発展に大きな影響を与えた人物を表彰するもので、過去のゴールデン・ニカ(グランプリ)受賞者によるノミネートおよび審査のもとで選定されるということだ。文化庁メディア芸術祭やACM SIGGRAPHなど他のコンペティションや学会でも従来の功績を讃えるカテゴリーや賞が設けられているが、メディアアートと共にその歴史を築いてきたArs Electronicaが独自の視点で功労者を表彰する仕組みを整えたことは意義深い。
今年の応募の締め切りは2014年3月7日(23:59 CET)と設定されている。メディアアートの表現形態およびそのコミュニティに対して、その変化に常に敏感に呼応しながら、世界最高の品質を求めて発展し続けるこのフェスティバルおよびコンペティションの今後に、引き続き注目したい。
Prix Ars Electronica
文化庁メディア芸術祭功労賞
http://j-mediaarts.jp/awards/special_achievement_award?locale=ja
ACM SIGGRAPH Awards