静岡市美術館の「Shizubi Project」は、多くの人が行きかうエントランスホールの開放的な空間で、さまざまな現代美術作品を紹介してきた企画。第6回となる今回は、「彼方へ」と題して、國府理、林勇気、宮永亮の作品が展示される。

「私が乗り物を作りたかったのは、それを手に入れれば、どこかへ行けると思ったから」と言う國府理は、プロペラをつけた自転車や、ヨットの帆をはって風で進む自動車などをつくって「KOKUFUMOBIL」と命名。自身の夢の乗り物を独自の設計思想と自らの手で生みだした。"ここではない何処か"へ向かうために、乗り物としての機能に想像力をプラスして走らせる國府作品は、自由であることや想像力の大切さを示し続けている。また、林勇気の映像作品《もう一つの世界》(2014)は、ネット上で集めた膨大な写真画像を切り抜き、1コマずつ切り貼りして制作したアニメーションである。建物、樹木、家電製品、食べ物、ペットボトル、車など、切り抜かれた無数の画像が川の流れのように浮遊する映像作品は、日々多くの画像がアップロードされ、共有され、消費されていくデジタル世界を鮮やかに可視化している。また、3D プリンタの登場など、データが直接物質化される時代において、画像やデータ、物質とは何かということを、優れて感覚的に体験させる。宮永亮は、各地に出かけて撮影した都市や田園の映像を切り貼りし、複数のレイヤー(層)として重ねて編集した映像作品を制作している。ときにめまぐるしく疾走し、ときにゆったりと流れる時間を映し出した映像は、世界の手触りが複雑に多層化され、固有の場所性を離れて、"どこでもない場所へと飛躍する"ような感覚を見るものに強く与える。

「彼方」とは、想像力で超えていく現実の世界の彼方であり、メディア(デジタル世界)の彼方でもある。本展を通して、メディア・テクノロジーに急速に覆われていく世界の「彼方」への想像力が改めて提示されるのではないだろうか。なお、展示は、3月28日(火)から美術館エントランスホール・多目的室でスタートしたのち、6月4日(日)〜6月18日(日)の約2 週間は展示室にも拡張する。また、関連イベントとして、林勇気、宮永亮によるアーティストトークが、3月28日(火)、6月4日(日)、6月18日(日)の計3回行われる。さらに、6月17日(土) 16:00からは、映像と音楽によるライブイベントが開催され、林勇気、宮永亮の映像とゲストミュージシャンによるライブが行われる予定。

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開催概要

「Shizubi Project 6 彼方へ 國府理・林勇気・宮永亮」
会場:静岡市美術館
会期:エントランスホール・多目的室 2017年3月28日(火)〜6月18日(日)
   展示室 2017年6月4日(日)〜6月18日(日)
http://www.shizubi.jp/

参加作家:
國府理、林勇気、宮永亮

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國府理《Sailing Bike》2005年 オートバイ部品、セイル、FRPほか

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林勇気《もうひとつの世界》2014年 FHDビデオ、プロジェクター(芦屋市立美術博物館での展示風景)写真:表恒匡

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宮永亮《KIWA》2013年 FHDビデオ