「テクノロジーが生み出す未来社会」をテーマにしたオンラインマガジン「TELESCOPE Magazine」で特集「ヒューマンインターフェース」が公開されている。この特集では「ヒューマンインターフェース」の役割を、人とコンピュータとをつなぎ、優れた技術を誰もが自由に使えるようにするものと考え、その進化は3つの欲求に基づいているとしている。

1.直感的に分かるように操作したい。

2.いつでもどこでも使えるようにしたい。

3.五感を使った感覚的な臨場感を体感したい。

以上の欲求のもとで、コンピュータのインターフェースはパンチカードによる入力から、文字によるコマンドライン、アイコンとマウスを中心にしたGUI(グラフィカル・ユーザ・インターフェース)、そしてスマートフォンやタブレットというモバイル端末で採用されているタッチ操作へと進化を遂げてきた。イントロダクションにある「テーマグラフ」はこの進化の流れに登場する人、アイデア、プロダクトの関係性が簡潔にまとめられており、理解を助けてくれる。

この特集はヒューマンインターフェースの過去の歴史だけなく、現在とこれからの展望についても多角的に学べようになっている。既に、メディア芸術祭での受賞経験があるメディアアーティストの真鍋大度氏とオーグメント・ヒューマン(ヒトの拡張)を研究テーマに掲げる暦本純一氏(東京大学教授)によるインターフェースにおける身体をめぐる対談や、ヒューマンインターフェースを「自己帰属感」という概念で捉え「新しい身体性の獲得」を目指す渡邉恵太氏(JST ERATO 五十嵐デザインインタフェースプロジェクト研究員)による論考などが公開されている。さらに、人工知能から人間とコンピュータの相互関係へと研究領域を移したテリー・ウィノグラード氏(スタンフォード大学教授)のインタビューなども準備されている。

眞鍋氏の登場からもうかがえるように、ヒューマンインターフェースとメディアアートとの結びつきは深い。自転車という日常的な乗り物で仮想世界を探索するジェフリー・ショー氏の《レジブルシティ》(1989年)は、メディアアートの古典であると同時に、ヒューマンインターフェースの可能性を身体的側面から押し広げた作品でもある。しかし、これらふたつの領域の影響関係はこれまでほとんど考えられてこなかったのではないか。ヒューマンインターフェースが「コンピュータの使いやすさ」ではなく「身体」を大きなテーマにしつつある今だからこそ、ヒューマンインターフェースとメディアアートとを重ね合わせた議論が求められている。

TELESCOPE Magazine
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