「平成29年度[第20回]文化庁メディア芸術祭受賞作品展」が9月16日(土)から開催されている。先行して15日(金)には受賞作家も多数駆けつけ、報道関係者に向けての内覧会が行われた。その様子をもとに、本展の見どころをレポートする。

オペラシティ2階『シン・ゴジラ』の展示より
© 2016 TOHO CO.,LTD.

第11回から第19回までのメイン会場であった六本木・国立新美術館から会場を移し、初台のNTTインターコミュニケーション・センター[ICC]、東京オペラシティ アートギャラリーを中心に開催されることになった「第20回文化庁メディア芸術祭 受賞作品展」。
平成9年度から続く「文化庁メディア芸術祭」はアート、エンターテインメント、アニメーション、マンガの4部門に分けて世界中から作品を公募し、優秀作品を顕彰・展示する、文化庁主催のメディア芸術総合フェスティバルで、今回20回の佳節を迎えることになった。4部門合わせて、世界88カ国・地域から4,034作品の応募があった。
審査で選ばれた今年度を代表するメディア芸術作品の数々を、まとめて鑑賞、体験できる貴重な機会となっている。
以下、会場の展示順にみていこう。

NTTインターコミュニケーション・センター [ICC]

NTTインターコミュニケーション・センター [ICC]のエントランスでは、エンターテインメント部門新人賞受賞作品であるRyo Kishiの『ObOrO』の展示が最初に目に入る。この作品は、送風機の風で浮遊する球にLEDを当てることで、不安定で偶発的な揺らぎを生み出す照明装置だ。さらにエントランスの右手には、舌に電気刺激を与えて味覚をコントロールする「ELECTRO FORK」とともに「無塩料理のフルコース」がテーブルセッティングされたエンターテインメント部門優秀賞を受賞した『NO SALT RESTAURANT』が展示されている。
5階の会場ギャラリーAに入るとすぐに、アート部門の大賞作品Ralf BAECKERのキネティックインスタレーション『Interface I』が、静かに揺れるような不思議な動きで存在感を放っている。
会場ではこの他、アート部門優秀賞の『Alter』、吉原悠博の『培養都市』、Benjamin MAUS / Prokop BARTONÍČEKの『Jller』、Ori ELISARの『The Living Language Project』4点と新人賞のRosa MENKMANの『DCT: SYPHONING. The 1000000th interval.』が展示されている。
「メディアアート」と聞くとデジタルによって完全に制御された、秩序だった美を想像してしまう。しかし、今回受賞した『Interface I』『Alter』に見られる不作為な動きやぎこちなさは、複雑なテクノロジーの援用によってカオティックな美を見出している。

エンターテインメント部門新人賞 Ryo Kishi『ObOrO』
© ryo kishi
エンターテインメント部門優秀賞 川嵜鋼平/中野友彦/中村裕美/橋本俊行/宇田川和樹/天野渉『NO SALT RESTAURANT』
© 2016 NO SALT RESTAURANT Committee (J. Walter Thompson Japan / The University of Tokyo / aircord / AOI Pro. / vector Group SIGNAL, Inc. / Ishii Clinic)
アート部門大賞 Ralf BAECKER『Interface I』
自作について説明する作者。192の直流モーターを用いたキネティックインスタレーションで、「赤い波形は動きを制約するパーツにもなっており、『全体』と『部分』の関係性を考える作品になっている」と解説
© 2016 Ralf Baecker
アート部門優秀賞 石黒浩、池上高志『Alter』
© 2016 Alter developed by Ishiguro Lab. in Osaka Univ. and Ikegami Lab. In Univ. Tokyo
アート部門優秀賞 Ori ELISAR『The Living Language Project』
ペトリ皿の中のバクテリアで古代ヘブライ文字を描き、現代ヘブライ文字への変化の過程を探究したバイオアート
© Ori ELISAR
アート部門優秀賞 吉原悠博『培養都市』
東京都心から新潟の柏崎刈羽原子力発電所までの「高電圧送電ケーブルのある光景」を4K一眼レフカメラで撮影、編集した映像インスタレーション
© Yukihiro Yoshihara
アート部門優秀賞 Benjamin MAUS / Prokop BARTONÍČEK『Jller』
河川の小石を地質年代別に分類するインスタレーション
© 2015 Benjamin Maus, Prokop Bartoníček
アート部門新人賞 Rosa MENKMAN『DCT: SYPHONING. The 1000000th interval.』
© Rosa Menkman

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第20回文化庁メディア芸術祭 受賞作品展
会期:2017年9月16日(土)~9月28日(木)11:00~18:00
※22(金)・23(土)は20:00まで
会場:NTTインターコミュニケーション・センター[ICC]、東京オペラシティ アートギャラリー 他
入場料:無料
主催:第20回文化庁メディア芸術祭実行委員会