ヴェネチア在住のアーティスト、シルビオ・ルオッソ氏(Silvio Lorusso)による《Data Centers Grand Tour (This Data Belongs Here)》が、e-PERMANENTで開催されている。e-PERMANENTはオンライン作品を公募しており、ルオッソ氏は第2回目の展示となる。

Data Centers Grand Tour (This Data Belongs Here)》をスタートさせると、「http://data-centers-grand-tour.co.uk
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」にとばされ、ディスプレイには「データセンター」と思われる建物が写された衛星写真が表示される。ソースコードを見ると「UK, Manchester 53.461654,-2.23818」と場所の情報が記載されている。画像をクリックすると、次のドメインとそのデータセンターの衛星写真に画面が遷移する。このように《Data Centers Grand Tour (This Data Belongs Here)》は、見ているサイトがどこのデータセンターを利用しているのかを示すものである。

表示されているデータがある場所を示すという単純なことを行うために、ルオッソ氏はデータセンターのある場所を情報サイトで突き止め、それが実際にあるかどうかグーグルマップなどの地図サービスで確認し、そこを利用しているホスティングサービスを調べ、ドメインを購入しホスティングする。彼は上記の手順からつくられる自らの作品を「データの物質性へのヴァーチャルな旅」と考えている。2013年3月29日現在、12カ国のドメインをめぐる旅をすることができる。

ルオッソ氏は『ホール・アース・カタログ(Whole Earth Catalog)』で有名なスチュアート・ブランド氏(Stewart Brand)のテキストを作品制作のきっかけとしており、そこには宇宙から撮られた「地球」の写真によって、人びとの意識が変わったと書かれている。「丸くて青い地球」の写真と同じように、ディスプレイ上のテキストや画像のデータとそれらが「ある」とされるデータセンターを捉えた航空写真が結びつけられると、「データ」への意識が変容していく。クリック後に徐々に表示されるデータセンターの画像を繰り返し見ていくなかで「データが『ここ』から来ているのか」という感覚が生じ、普段は全く考えもしない「データがある場所」を意識せざるを得なくなる。

「データがある場所」への意識によって、そのあいだがどうなっているかはわからないにもかかわらず、地球上のどこかと目の前のパソコンのディスプレイとが結びつく。それは突然かかってくる「電話」と似たような感覚かもしれない。しかし、電話は「時間の同期」がつながりの感覚をつくるが、インターネットでは「データがある場所」からそれを特定する画像がデータとして送信され、ディスプレイに表示される「空間の同期」によって、その感覚が生じる。それゆえに、《Data Centers Grand Tour (This Data Belongs Here)》はインターネットが文字通りの意味で「地球の上に」構成されていることを強く感じさせてくれる。

 

《Data Centers Grand Tour (This Data Belongs Here)》
http://data-centers-grand-tour.net/