ヴィレム・フルッサー・アーカイブ(ベルリン、ドイツ)は、チェコスロバキア出身の哲学者ヴィレム・フルッサー(1920−91)に関する資料を管理し、フルッサーをめぐる研究や表現活動を支援する非営利団体。フルッサーはマーシャル・マクルーハン(1911−80)と並んでメディア論の分野では代表的な思想家である。1997年にメディア哲学への多大な貢献が認められZKM(Zentrum für Kunst und Medientechnologie Karlsruhe、ドイツ)より「ジーメンス・メディア・アート賞(Siemens-Medienkunstpreis)」を授与された。ドイツの文芸・メディア評論家フリードリヒ・キットラー(1943−2011)が師事したことでも知られる。邦訳されたフルッサーの著作は『サブジェクトからプロジェクトへ』(村上淳一訳、東京大学出版会、1996年)、『テクノコードの誕生』(村上淳一訳、東京大学出版会、1997年)、『写真の哲学のために』(深川雅文訳、勁草書房、1998年)、『デザインの小さな哲学』(瀧本雅志訳、鹿島出版会、2009年)がある。
アーカイブは、1998年にエーディト・フルッサー夫人よりジークフリート・ジーリンスキー氏(ベルリン美術大学教授、メディア考古学)が譲り受けた。フルッサーによる2,500以上の原稿をはじめ、全ての出版物、書簡、蔵書、画像、レクチャーやインタビューの映像/音声などがある。また、フルッサーにまつわる研究論文の収集をおこなっている。ユニークなコレクションとして、1989年におこなわれたフルッサーのレクチャーを元にITAS(Institut für Technikfolgenabschätzung und Systemanalyse、ドイツ)が制作したマルチメディア学習システム「フルッサー・ハイパーテキスト・プロトタイプ2」(1992年制作、2007年収蔵、2010年修復)がある。希望者は事前予約のうえ、ベルリン美術大学で資料を閲覧することができる。
また、国際的な研究拠点になることを目指して、ヴィレム・フルッサー・アーカイブは「The International Flusser Lectures」シリーズを出版するほか、フルッサーに関する出版、ワークショップ、シンポジウム、レクチャー、芸術活動などを国際的にサポートする。毎年ベルリンで開催されるメディアアートのフェスティバル「トランスメディアーレ(transmediale)」と共同で2008年より「ヴィレム・フルッサー賞」を設けていたが、2012年はベルリンでの研究やプロジェクトを2ヶ月間支援する「ヴィレム・フルッサー・レジデンス・プログラム」がおこなわれる予定。
ヴィレム・フルッサー・アーカイブ