アメリカ合衆国のポピュラー・カルチャー学会(Popular Culture Association、略称PCA)は、アメリカン・カルチャー学会(American Culture Association、略称ACA)との合同全国大会を、2013年3月27日から30日にかけて、首都ワシントンD.C.で開催する予定。

PCA/ACAにはいくつもの部会が設置されているが、このうちのアジアン・ポピュラー・カルチャー部会が日本のアニメーションとマンガをテーマにした発表論文を募集している。アジアン・ポピュラー・カルチャー部会の代表を務めているのは、1999年からマンガ専門ジャーナル「国際コミック・アート・ジャーナル」International Journal of Comic Art)を発行している、ジョン・A.・レント氏。

テーマは二つ用意されており、一つは「日本アニメーション・マンガの<おぞましさ>について」とされている。ここでの<おぞましさ>は、フランスの文学理論家ジュリア・クリステヴァ氏が用いた、主体と客体の境界を脅かし恐怖を引き起こすものとしてのアブジェクト(abject)という概念を意味しており、論文は日本のアニメーション・マンガにおける、ホラーやグロテスクをテーマとすることが要求されている。

もう一つのテーマは「日本アニメーション・マンガを用いた教育」。実際にどのような形で授業のなかに取り入れているのか、そしてそれに対する生徒や同僚たちの反応はどんなものか、について報告が求められている。締め切りは2012年11月30日。

PCAにはマンガ(Comics and Comic Art)部会も開設されており、こちらは「マンガの中の中世」をテーマとした発表を募集している。

PCAはボーリング・グリーン州立大学の故レイ・ブラウン氏やミシガン州立大学の故ラッセル・ナイ氏らによって設立され、1971年に第1回の会合が開かれた。当時、すでにいくつかの先駆的な仕事はあったにせよ、アカデミズム内部においてポピュラー・カルチャーあるいはマス・カルチャーはまだ真面目な研究対象として認められていなかった。その様子はブラウン氏の『アカデミアにさからって』に詳しい。

PCAの学会誌「ポピュラー・カルチャー・ジャーナル」The Journal of Popular Culture)は、1971年の会合に先立つ1967年に発刊されている。マンガ関連の論文も1969年冬号のピーナッツに関する論文(Peanuts: An American Pastoral)を嚆矢として、数多く掲載されてきた。

また、ブラウン氏のボーリング・グリーン州立大学にはブラウン氏の名を冠したブラウン・ポピュラー・カルチャー図書館が、ナイ氏のミシガン州立大学図書館にはコミック・アート・コレクションが設置されており、オハイオ州立大学のビリー・アイルランド・カートゥーン・ライブラリー&ミュージアムおよびアメリカ議会図書館と共に、アメリカ合衆国における重要なマンガ・アーカイブの一つとなっている。

PCAは長らくアメリカにおけるアカデミックなマンガ研究の拠点として機能してきたと言えるだろう。

「日本のアニメーション・マンガ」発表原稿募集要項
http://comicsresearch.blogspot.jp/2012/11/cfp-anime-and-manga-pcaaca-washington.html?m=0