メディアアートヒストリー(Media Art History)は、オリバー・グラウ氏(ドナウ大学教授、オーストリア)を中心に、2005年より「メディアアートと科学技術の歴史に関する国際会議」を主催し、関係者のプラットフォームになることを目的にした非営利組織である。

2011年10月、メディアアートヒストリーが発起人となり「メディアアートの国際的組織形成と支援の必要性(MEDIA ART NEEDS GLOBAL NETWORKED ORGANISATION & SUPPORT – International Declaration)」について声明文を発表し、100名以上のメディアアート関係者の賛同を得た。

声明文の主旨は以下の通りである。メディアアートが40年以上にわたって情報化社会において重要な位置を占め、世界各国で作品を多く発表してきたにもかかわらず、大学や美術館ではメディアアートの研究が重要視されておらず、資料も充分に収集されていない状況にあることを指摘。メディアアートに関する学術的研究は、今後もその周辺分野にとどまらざるを得ない点について警鐘を鳴らす。現在直面するアーカイブや作品保存の課題、ドキュメンテーション資料の散逸などにも言及している。これまで、このような問題に取り組むグローバルな組織的運動がなかったことを踏まえて、メディアアート研究のための継続的な国際連携の仕組みや組織づくりが急務であることを訴えたものになっている。

科学研究の分野で、デジタルネットワーク環境で国際的な共同研究や共有データによる研究(e-research)がおこなわれている事例を挙げ、メディアアート研究においても、研究のための資料や論文、作品の修復と保存に関する手法、アーカイブやデータベースなどをオンライン上で共有できる国際的な仕組みを提案。目標として、「継続的な資金構造の設置」と「関係組織の共有データに対する援助」を声明に掲げた。

このような組織が実際に形成されるためには、さまざまな壁を乗り越える必要があると考えられるが、メディアアートヒストリーの働きかけは、国際的かつ領域横断的な研究が必要とされるメディアアート分野では必要な一歩であるだろう。今後、欧州や北米だけでなく、アジア、アフリカ、ラテンアメリカも含めたメディアアート関係組織の連携がいち早く進展し、メディアアート史やアーカイブ研究が国際的に展開することを期待したい。

MEDIA ART NEEDS GLOBAL NETWORKED ORGANISATION & SUPPORT – International Declaration

http://www.mediaarthistory.org/