2013年11月13日、韓国国立現代美術館ソウル館が開館した。1969年に開館したソウル市庁前の徳壽宮館、ナムジュン・パイク氏の《多多益善(The more the better)》(1988年)で知られている、京畿道の果川館に引き続き、3番目の国立現代美術館の開館である。来年の2015年には忠清道に清州館が開館する予定である。過去「National Museum of Contemporary Art」だった英語表記も、今回「National Museum of Modern and Contemporary Art」に変更された。現在開催中の5つの開館特別展のなかで、メディアアートの比重が非常に大きいのは、新しい4館体制のなかでソウル館の担う機能が、「同時代の現代アートの受容」であることと関係しているのであろう。

所蔵品を中心に韓国美術界のある側面を反映している「ツァイトガイスト・コリア」展に対して、「連結-展開」展は6カ国、7人のキュレーターによって選定された7人のアーティストの作品で構成され、世界美術の一面が窺われる展示である。日本からはキュレーターの長谷川裕子氏ともの派の菅木志雄氏が参加した。一方、ホルヘ・ルイス・ボルヘスの短編小説『エル・アレフ』からタイトルを借用した「アレフ・プロジェクト」は、キュレーター、アーティスト、サウンドアーティスト、演出家、パフォーマー、建築家、微生物学者などのコラボレーションによる。当館の領域横断的アートプラットフォームとしての方向性を提示する本プロジェクトのフィリップ・ビースリー氏とエドウィン・ファン・デル・ハイデ氏と「連結-展開」展の出品作家ヤン・ミンハ氏の体験型作品の前で、多くの観客が足をとどめていた。

名前の通り、サイト・スペシフィックな「現場制作設置プロジェクト」で紹介された作品は、当館の建築的特徴とアイデンティティをもっとも明確に示している。美術館の地下に光を誘導するように設計され、美術館の中心となっている大型展示空間「ソウル・ボックス」に設置されたのは、ス・ドホ氏の《家の中の家の中の家の中の家の中の家》。チェ・ウラム氏の想像力が生み出した巨大機械生命体《オペルトゥス・ルヌラ・ウンブラ(Hidden Shadow of the Moon)》は、地下天井に吊られて光を放ちながら優麗に動いている。アートユニットチャン・ヨンへ重工業は、第6展示室と倉庫ギャラリー、そしてそれらをつなげる階段と通路を3つの空間として捉え、《Groovin’ to the Beat of the Big Lie》を制作した。ガラス壁面を持つキューブ型空間である倉庫ギャラリーは、11チャンネルの作品が完璧に機能する多視点的な空間となっている。3人/チームのアーティストは、金沢21世紀美術館、東京都現代美術館、森美術館、ICC、恵比寿映像祭、東京ワンダーサイトなどで紹介されてきた作家でもある。

設計が始まった2009年から5年間、2人の写真家が建設の現場を記録してきた。社会意識の強い彼らの写真とヤンアチ氏によるサウンド・インスタレーションは、地味になりがちな「美術館の誕生:建立記録展」を見応えのある展示にしている。そこで上映されていた映像が見せているように、本館の敷地には、戦後国軍機務司令部など、韓国の近現代史が刻まれている。ついつい過去が新しいものに書き換えられる大都市ソウルの真ん中に国立美術館が新しく開館することの意味、そして現代アートが担うべき社会的役割とはいかなるものであるのだろうか。偶然の一致に過ぎないかもしれないが、5つの開館特別展のタイトルが、空間的な意味を持っていることが印象に残った。この新しい場で、同時代性に満ちあふれる現代アートに出会うことが楽しみだ。

韓国国立現代美術館ソウル館

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