スイスのバーデンで2011年9月6日から11日まで開催されたアニメーション映画祭ファントーシュにて、「Anidoc」と題されたアニメーション・ドキュメンタリーの大規模な特集があり、短編32本、長編4本が上映された。

アニメーションによるドキュメンタリー作品は国際的なアニメーション・シーンにおける近年のひとつの流行である。レバノン内戦に従軍した兵士の記憶を探る長編『戦場でワルツを』(2008)や、カナダの伝説的アニメーション作家ライアン・ラーキン氏のインタビューに基づいた3DCG作品『ライアン』(2004)などが代表的な作品として挙げられる。

アニメーション・ドキュメンタリーは、一般的に、現実を客観的に記録するというより、個人の記憶にフォーカスを当てるなど、主観的なリアリティによって捉えられた世界の再現と理解に重点を置くことが多い。今回の特集は、そういった基本的な方向性を踏まえつつ、実話ベースの作品や伝記作品、また、アニメーション史初期の作品からウィンザー・マッケイ氏がニュース映画の形式を模して制作した『ルシアニア号の沈没』(1916)が選ばれるなど、アニメーションにおけるこの新たな潮流を、幅広い視野で捉えようとする試みであったといえよう。

アニメーション・ドキュメンタリーについては、「Animation: An Interdisciplinary Journal」が次号で特集を予定するなど、学術的にも注目を集めつつある。

(土居 伸彰)

Animation: An Interdisciplinary Journal

http://anm.sagepub.com/