パリ・イタリア文化会館でひらかれていたhttp://mediag.bunka.go.jp/article/post_95-208/について先日紹介したが、今回はパリ・スウェーデン文化会館でひらかれている「スウェーデン・コミック・アーティスト展」について紹介しよう。

「Life is Not For Amateurs: Swedish Comics Artists Interpret STRINDBERG」と題された本展覧会は、スウェーデンの作家にして錬金術師、ヨハン・アウグスト・ストリンドベリ(Johan August Strindberg、1849—1912)に捧げられている。

ストリンドベリは今日の日本では忘れられた作家となってしまったが、明治・大正期には上田敏、森鴎外などによってさかんに翻訳がおこなわれていた。スウェーデンにおいては、その波瀾万丈の生涯もふくめ、もっとも有名な作家のひとりと言えるだろう。今年はストリンドベリ没後100周年にあたる。

スウェーデンの漫画家たちによる、ストリンドベリの作品や生涯を題材にした作品の原画が展覧会場では飾られていた。これは2012年の1月末にアングレーム国際マンガ・フェスティバルで開催された展覧会が、2月8日から4月15日の間、パリのスウェーデン文化会館に場所を移して、再び展示されたものだ。

参加している漫画家たちは以下のとおり。

Malin Biller

Anneli Furmark

Fabian Göranson

Joanna Hellgren

Loka Kanarp

Kolbeinn Karlsson

Henrik Lange

Knut Larsson

Matilda Ruta

Joanna Rubin Dranger

Per Demervall & Ola Skogäng

すこし意外に聞こえるかもしれないが、スウェーデンもふくめた北欧は、何人もの世界的に有名な漫画家を輩出している地域だ。

もっとも有名なのは『ムーミン』のトーベ・ヤンソン女史だろうか。ヤンソン氏はフィンランドの作家・漫画家だが、『ムーミン』の小説版はスウェーデン語で執筆されている。マンガ版は小説が発表されたあとに、イギリスの新聞で掲載された。ほかにも、一時期日本でも翻訳されていた『アダムソン』(Adamson)の作者オスカー・ヤコブソン氏(Oscar Jacobsson)などがスウェーデンの漫画家として有名だ。実は、スウェーデンはアート・スピーゲルマン氏の生まれ故郷でもある(育ったのはアメリカだが)。最近の作家では、今回の展覧会にも参加している『フランセス』Frances)の作者、ジョアンナ・ヘレグレン女史(Joanna Hellgren)の名前が確実に世界で存在感を増しつつある。

北欧の市場規模は決して大きいとは言えないが、レベルの高い作品・漫画家の生まれる土壌が揃っていると言えるだろう。先日の「マンガ所蔵館の国際会議」にも出席していたスウェーデンのストックホルム文化センター内にあるKulturhuset–Serieteketは、1996年の開館以来スウェーデンのマンガを収集・保存・公開するだけでなく、1999年から同人誌および少部数出版物の展示即売会(2012年度から名称を「ストックホルム国際マンガ・フェスティバル」に改称)をオーガナイズしてきた。

また、マンガの研究および批評誌である「BILD&BUBBLA」(イメージとバブル)は1968年に創刊され、現在でも刊行されつづけている。この雑誌を発行しているのは、おなじく1968年に設立されたスウェーデン・コミックス・アソシエーション(Seriefrämjandet)。その代表であるフレデリック・ストレンベリ氏(Fredrik Strömberg)はマンガ研究者として世界的に有名な人物で、今回の「スウェーデン・コミック・アーティスト展」では制作を担当している。ストレンベリ氏には『スウェーデン・マンガの歴史』(Swedish Comics History) というスウェーデンのマンガを概説した著作がある。

2008年には日本のスウェーデン大使館で「スウェーデンコマ割り漫画展」がおこなわれており、すでに日本でもその一端は紹介されているが、すぐれた女性作家が多い点など、まだまだ北欧のマンガは奥深そうだ。

スウェーデン・コミック・アーティスト展

http://www.si.se/Paris/Francais/Institut-suedois-a-Paris/Agenda/ - 11333