猫のクレイジーはネズミのイグナツが好きでたまらない。ところがイグナツのほうは、どうやってクレイジーにレンガを投げつけて頭を凹ませるか、そればかり考えている。犬の巡査パップはイグナツを牢屋にぶちこむため、レンガを投げつける現場をおさえようとして2人のあとをつけまわしている。実はパップ巡査はクレイジーのことが好きなのだ。
性別も明らかにされない3人(匹)の、この不思議な三角関係が描かれた『クレイジー・カット(Krazy Kat)』は、ちょうど100年前の1913年に誕生した。
当時、一般大衆からの人気はいまひとつだったと伝えられるが、E.・E.・カミングス、ピカソ、『ピーナッツ』の作者であるシュルツなど、名だたるアーティストが愛した作品として、マンガ史上に燦然と輝く傑作である。
以前にもお伝えしたことのある査読付きオンライン学術誌「The Comics Grid」が、Ubiquity Pressへプラットフォームを移転するキックスタート企画として、この『クレイジー・カット』100周年を記念した論文を募集している
Ubiquity Pressは、ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン(University College London、略称UCL)の研究者たちが始めたオープン・アクセス・ジャーナルの出版社。ウェブ上で自由にアクセスができるオープン・アクセス・ジャーナルのための「ブダペスト・オープン・アクセス運動」(Budapest Open Access Initiative、略称BOAI)と、科学データの共有化を推し進める「パントン原則」(Panton Principles)に賛同しており、ホームページによれば現在12誌のジャーナルを発行している。また、ウェブ上のデジタル資源を恒久的に保存する取り組み「クロックス」(Controlled Lots of Copies Keep Stuff Safe、略称CLOCKSS)にも参加している。これは出版社から何らかの理由でコンテンツが供給されなくなった場合でも、デジタル資源へのアクセスを保証するため、出版社と図書館が協同でアーカイビングを行う試みだ。
論文の募集は2013年10月1日まで。オープン・アクセス・ジャーナルとして、論文の投稿にはいわゆるArticle Processing Charge(APC)が発生するが、権利放棄を条件にその費用200ポンド(約3万円)を免除することも可能なそうなので、投稿規則も含め、詳しくは下記のリンク先を参照してほしい。
「クレイジー・カット100周年」論文募集