2014年3月19日から23日にかけて、オランダ・ユトレヒトにて、第17回オランダ国際アニメーション映画祭(Holland International Animation Film Festival、通称HAFF)が開催された。筆者は短編部門の審査員として参加してきたので、コンペティションの結果も含めた映画祭のレポートをしたい。

HAFFの第1回開催は1985年で、アニメーションを専門とするものとしては古い歴史を持つ映画祭である(広島国際アニメーションフェスティバルと同年スタート)。当初は隔年だったが、2009年からは毎年開催されている。ただし、広島も含め、一般的に「四大アニメーション映画祭」としてまとめられることもある映画祭(アヌシー、ザグレブ、オタワ、広島)と比べると、規模自体はそれほど大きくない。メイン会場となるのはアートフィルムを中心に上映を行うシネコン「ルイス・ハートルーパー・コンプレックス」で、最高で200席程度の4つのスクリーンでほぼすべての上映は行われる。HAFFはどちらかといえば「映画祭関係者のための映画祭」としての色合いが強く、今年も、ヨーロッパの主要なアニメーション映画祭の関係者の姿が多く見られた。

HAFFは新しいトレンドを積極的に作りだそうとするタイプのアニメーション映画祭で、それゆえに多くの関係者が集まる。その評価には、初回の開催から映画祭のディレクターを務めるゲルベン・シェルメル氏が大きく寄与している。近年の彼はアジア圏における新たな作家の発掘および評価に腐心しており、とりわけ中国とのつながりが深い。実際、今年のHAFFでは、中国とのつながりが多く見られた。今年の開会式には中国の現代アートシーンを代表するアニメーション作家スン・シュンの新作Magician Party and Dead Crow(2013年)が3D映画として上映され、短編部門の審査員を担当したチャオ・マー氏は会場近くのギャラリーを舞台に大規模な3面上映のインスタレーション作品を展開した。昨年度短編部門の最優秀ノン・ナラティブ作品を受賞したレイ・レイ氏も、受賞作Recycled(2012年、トーマス・ソービン氏との共同監督)を立体的に展開するインスタレーションを映画祭期間中に発表した。展示の多さからもわかるように、HAFFは現代美術とアニメーションの接合を行おうとする映画祭でもある。

映画祭のメインとなるコンペティションで特徴的なのは、短編部門にナラティブ(物語性のある作品)とノン・ナラティブ(物語性のない実験的な作品)の2つのカテゴリーを設定し、それぞれに同等の最優秀賞を設定していることである。映画祭の評価は、一般的には市場とは別の価値基準を作りだすものとして機能するべきものだが、現実を見れば、主要な賞を獲得するのはナラティブ作品であることが圧倒的な割合で多い。HAFFがノン・ナラティブのカテゴリーをわざわざ設定するのは、映画祭における評価の偏りの是正という目的がある。

なお、筆者が審査員のひとりを担当した短編部門のグランプリ受賞作品は、ナラティブ・カテゴリーはLove Games(2013年、韓国、ヂョン・ユミ監督)、ノン・ナラティブ・カテゴリーはThe Labyrinth(2013年、ベルギー、マシュー・ラバイエ監督)となった。長編部門のグランプリはThe Fake(2013年、韓国、ヨン・サンホ監督)で、短編部門・長編部門ともに韓国作品が受賞することとなった。

オランダ国際アニメーション映画祭

http://www.haff.nl/en/