「トランスメディアーレ(transmediale)」は1988年から始まった「ビデオ・フィルム・フェスト」を前身とするメディアアートのフェスティバルで、毎年ベルリン(ドイツ)で開催されている。2012年、トランスメディアーレは25周年とともに新しいアーティスティック・ディレクター、クリストファー・ガンシング氏(Kristoffer Gansing)を迎えた。35歳の若さで抜擢されたガンシング氏は「トランスメディアーレ2012」のテーマとして、「in/compatible(互換性のない、非両立の)」を提示した。キュレトリアル・ステイトメントは、現在、さまざまな矛盾した状況があちこちで表面化し、あたかもすべてが失敗だったのではないかと言わぬばかりの世界的な危機に対して、コネクティブ・メディアがそれを簡単に可視化することによって状況を悪化させているのではないか、という問題意識から始まる。全てがつながると考えられてきたネットワーク文化におけるテクノロジーの不調和や衝突から生まれたアーティスティックな創造性から、「incompatibility」の生産性と非生産性の両面を探る。ガンシング氏のインタビューによれば、「テクノロジーは私たちの生活における社会的/経済的/政治的側面では相容れない(incompatible)点と、そうではない点(compatible)がある」という。こうした二面性を強調するために「in」と「compatible」の間にスラッシュが挿入されているのだろう。

このテーマに基づいて企画された、シンポジウム「in/compatible: systems |publics|aesthetics」、展覧会「Dark Drives. Uneasy Energies in Technological Times」、ビデオ・プログラム「Satellite Stories」、パフォーマンス・プログラム「The Ghost in the Machine」などが2012年1月30日より開催される。

また、年間を通して継続的にリサーチや作品制作、イベントなどをおこなう学際的なプラットフォームとして、オルフス大学Digital Aesthetics Research Center(DARC、デンマーク)やベルリン大学ヴィレム・フルッサー・アーカイブとの共同で「reSourse」が新たに設置された。過去のトランスメディアーレでは、かならずしもアカデミックな活動に重点をおいてこなかったが、「reSourse」では、シンポジウムや、より学際的な展開を目指していくという。

さらに、25周年を迎えたことを契機に、1980—90年代に発表されたビデオ作品やネットアートの展示、パフォーマンスの再演をおこなう。他方では、同フェスティバルのデジタルアーカイブ構築に向けて議論もおこなわれるようだ。

トランスメディアーレ2012

http://www.transmediale.de/

DIGICULT クリストファー・ガンシング氏インタビュー記事

http://www.digicult.it/en/2012/TransmedialeKristofferGansing.asp