2013年7月12日から9月22日まで、ソウルオリンピック開催25周年記念国際展「力、美はどこにあるのか?(Power, Where Does the Beauty Lie?)」が開催されている。会場は、韓国ソウルオリンピック彫刻公園のなかに位置しているソマ美術館(Seoul Olympic Museum of Art、略称SOMA)。日本からアンテナ (Antenna: 市村恵介、田中英行)、大巻伸嗣氏、チームラボ(team★Lab)、韓国からカン・エラン(Kang Airan)氏、ゴ・ミョングン(Koh Myungkeun)氏、キム・シンイル(Kim Shinil)氏、ナムジュン・パイク(Nam June Paik)氏、ス・ドホ(Suh Do Ho)氏、ソン・ドンフン(Song Donghun)氏、ジョン・ヒョン(Chung Hyun)氏、チェ・テフン(Choi Taehoon)氏、中国からワン・ゾン(Wang Zhong)氏、ウ・ウェイシャン(Wu Wei Shan)氏、イン・シャオフェン(Yin Xiaofeng)氏、そして台湾からリウ・ポチュン(Liu Po Chun)氏、計15人・チームが参加した(カタログ掲載順)。

本展において「力」と「美」とは、スポーツと美術を象徴する概念であるだけでなく、29点の展示作品を照らす普遍的なテーマとして機能している。様々な人種・性別を持つ数千個の人形PVCフィギュアがガラスの床面を支えている、ス・ドホ氏の《Floor》と、様々な形で金剛力士を表現したリウ・ポチュン氏のユーモラスなキネティック彫刻は、それぞれ異なる意味の「力」を表現している。その一方、大巻氏の一枚の布が重力に逆らって揺れ動く空間《Liminal Air Space-Time/Wave》、ジョン・ヒョン氏が持ち込んだ12トンの鉄の球の物質感、そしてゴ・ミョングン氏の、建築のイメージがフィルムで貼られた透明な容器は、それぞれ対照的な「美」を考えさせる。とりわけ、孔子と老子の対話など中国古典をモチーフとする、ウ・ウェイシャン氏のブロンズ彫刻群と、7人のラマ僧のブロンズ彫刻に映像プロジェクションを加えた、イン・シャオペン氏の《行者》、伊藤若冲の升目画「鳥獣花木図屏風」と「樹花鳥獣図屏風」をモチーフとする、チームラボのインタラクティブ・デジタル・ワーク《世界は統合されつつ、分割もされ、繰り返しつつ、いつも違う》は、広い意味で東アジアの表象であると同時に、異なる伝統の現在形を提示している重要な出品作である。

本展に出展している東アジアのアーティストのなかに、日本(1964年東京オリンピック)、韓国(1988年ソウルオリンピック)、中国(2008年北京オリンピック)とともに台湾を加えた企画意図は、アンテナの滞在制作による新作《エケケイリア》に反映されていると言える。古代オリンピア開催期間中の聖なる休戦という意味のタイトルを持つ本作は、4つのお神輿と4カ国の人々に価値の意味を問いかけたインタビュー映像のインスタレーション、そしてキャラクターJAPPY (Japan+Happy)の登場するお祭りパフォーマンスで構成されている。もちろん、オリンピックという国際イベントの経済的、政治的側面を考えると、平和とは素朴な祈願にすぎないかもしれない。とはいえ、スポーツ祭典の精神に遡り、いまも葛藤と紛争が続いている東アジアを、現代アートを通して再考することは意味深い試みであるかのように思える。2013年9月13日の2020年オリンピック・パラリンピック開催都市決定発表を目前にしているいま、過去あるいは未来の東京オリンピックを切り口にするメディアアート展示を想像してみる。

韓国ソマ美術館「力、美はどこにあるのか?」展

http://www.somamuseum.org/