平成27年度メディア芸術連携促進事業の報告会が、3月13日(日)に京都国際マンガミュージアムで開催されます。

※2016年11月15日 研究マッピングの最終報告会レポートを追加しました。

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-メディア芸術連携促進事業とは-

 メディア芸術連携促進事業は、メディア芸術分野における、各分野・領域を横断した産・学・館(官)の連携・協力により新領域の創出や調査研究等を実施する事業です。本事業の目的は、恒常的にメディア芸術分野の文化資源の運用と展開を図ることにあります。

 報告会では、本事業の一環として実施した「連携共同事業」に採択された12事業の取り組みを報告するとともに、別途研究プロジェクトとして取り組んできた研究マッピング(マンガ領域・ゲーム領域)の活動報告を行います。

※本事業が対象とする「メディア芸術」とは、デジタル技術を用いて作られたアート(インタラクティブアート、インスタレーション、映像等)、アニメーション、マンガ、ゲームとしています。

■開催日時:平成28年3月13日(日)13時30分〜16時45分(開場13時)

■会場:京都国際マンガミュージアム 多目的映像ホール

    所在地:京都市中京区烏丸通御池上ル(元龍池小学校)

■参加無料(ミュージアムへの入館料は別途必要です。)参加をご希望の方は、当日直接会場にお越しください。

■主催:文化庁

■運営:メディア芸術コンソーシアムJV事務局(マンガ・アニメーション・ゲーム・メディアアート産学官民コンソーシアム/学校法人京都精華大学)

■協力:京都国際マンガミュージアム

-連携共同事業 報告団体-

 愛知県立公立大学法人 愛知県立芸術大学

 一般社団法人 アニメミライ

 一般社団法人 日本アニメーター・演出協会

 学校法人京都精華大学

 学校法人 東京工芸大学

 学校法人立命館 立命館大学ゲーム研究センター

 公立大学法人京都市立芸術大学

 デジタルコミック協議会

 日本アニメーション学会

 森ビル株式会社

 (五十音順)

-研究プロジェクト 活動報告-

 マンガおよびゲームの2領域の研究者名と研究内容を俯瞰するマッピングに関する調査を行い、2領域の動向(政策の動向、業界の動向、研究の動向、人材育成の動向)を把握するための情報収集と共有の方法や仕組を検討していくプロジェクト

●最終報告会レポート「研究マッピング(マンガ領域)」

報告者 大阪市立大学 石川 優

・目的

 まず、このプロジェクトの目的は、2点であることが報告された。

  1. 日本・海外におけるマンガ/コミックス研究情報(特に文献)を収集すること
  2. その情報を社会での活用に向けて整理し、布置(マッピング)すること

 さらに研究プロジェクトの背景として、文化庁メディア芸術情報拠点・コンソーシアム構築事業(平成24・25年度)『マンガ研究マッピング・プロジェクト』の後継事業である旨の説明がなされた。

・実施体制と活動内容

 プロジェクト体制は、京都精華大学副学長の吉村和真教授が監修、実務班は杉本=バウエンス・ジェシカ(海外班、龍谷大学講師)、石川優(国内班、大阪市立大学研究員)、西原麻里(国内班、京都精華大学非常勤講師)があたり推進担当となり、日本マンガ学会がの協力を得る体制で実施された。

 本年度の活動は内容として、まずミーティングによる議論を行い(詳細は後述)、次にマンガ/コミックス研究動向(最新の出版物)の調査を行ったことが報告され、平成24〜25年度から休止期間があったためその間の内容のアップデートを行うため、平成26年度〜平成27年9月に公表された出版物に対して国内と海外に別れて調査された経緯の説明がなされた。国内班では学術書、インタビュー集、ムック本、資料集などを収集し、その収集にあたっては日本マンガ学会の秋田孝宏理事のに情報提供を頂いた。こと、海外班では英語・ドイツ語・フランス語で公表された主に学術書を中心に調査し、情報収集にはオンライン文献管理ツールの Mendeley (URL: https://www.mendeley.com/) を活用したことが報告された。詳細な文献については、報告書に一覧が記載されている。

・課題

 今後に向けての課題としては、先の研究ミーティング議論では共有された「収集した情報をどう活用するのか」、「誰のためにマッピングするのか?」が問題となった。そこでこのプロジェクトチームいう課題に対して、本プロジェクトでは、マンガ/コミックス研究にチャンネルを持たない人たち、例えば教育(小中学校での教材としての利用)、地方自治体(マンガを活用とした地域振興、市民講座や講演会の企画)、企業(ビジネスパーソン向けの企画書・親書などでのマンガの活用など)に向けて向けた提供するを試みるという方針とした。つまりが採られた。このことは、マンガ/コミックス研究の「実用性・応用可能性」に着目したマッピングづくりを志向した意味を持つとなる。これはいう。また、現在のマンガ研究者たちは、すでに独自に研究動向の情報へのアクセス方法を把握していると考えた結果であることが補足説明された。

 最後に、今年度の研究を踏まえて踏まえ、次の3点が今後の展望として述べられた。

  1. ニーズの調査
    ・マッピングの想定したユーザーである、教育の現場や地方行政の担い手などを中心に、マンガ/コミックス研究のニーズを調査していくこと
  2. 情報収集の継続
    ・引き続き文献情報を更新し、これまで(平成24・25年度)の成果との統合作業を行うこと
  3. マッピングの構想
    ・文献情報の整理方法(分類、タグ付け、キーワードなど)の検討を行う、そして行い、マッピング公開方法の検討としてはまずはweb公開を目指し、既存媒体(メディア芸術カレントコンテンツ)との連携等によりよる可視化していきたい。そしてを試みていくこと。研究プロパー以外がの方でも、気軽にアクセスできるマッピングを提供していくこと。

●最終報告会レポート「研究マッピング(ゲーム領域)」

報告者 立命館大学衣笠総合研究機構 松永伸司氏

・本事業の背景と目的

 報告者の松永伸司氏(立命館大学衣笠総合研究機構・客員研究員)は、本事業の目的を、国内外のゲーム研究の状況を整理し、それを通じて今後の国内のゲーム研究の活性化としている旨が報告された。とりわけ近年、ゲーム研究(ゲームスタディーズ)が分野として確立が進んでいることを受け、課題として、分野間の相互理解の不十分さ、国外動向との分離、またそれに起因する国内文献による国際的動向の網羅性の低さの三点を挙げている。国内外のゲーム研究の動向を把握するための見取り図を作ることでそのような問題を整理することを企図するものとして本事業は推進されているという。

 より具体的には、国内外のゲーム研究の重要文献をピックアップした文献リストを作成したうえで、それらをいくつかの観点から分類・タグづけし、ゲーム研究の現状を体系的に整理することがその目標である。松永氏は、当日に報告のあったアニメ・マンガ分野におけるマッピング事業について言及した上で、ゲーム分野では本活動は初年度であることから、まずリスティングを優先することにしたという経緯があると説明を行った。本リストの作成と公開を通じて、分野間の相互理解が生まれるとともに、国外研究へのアクセスがしやすくなり、結果として他分野の研究者や初学者がゲーム研究に参入しやすくなるという効果を想定しての活動である。

 本事業を実施するにあたって、事前に設定された方針は、第一に原則的に1990年以降の文献をピックアップすること、第二に読者の多様性に配慮すること、第三に国内外の多様な分野からバランスよく文献をピックアップすること、の三点であった。

・実施体制とスケジュール

 実施体制は、コーディネーターを細井浩一氏(立命館大学映像学部・教授)が、メンバーを本報告者である松永伸司氏(立命館大学衣笠総合研究機構・客員研究員)のほか、井上明人氏(立命館大学衣笠総合研究機構・客員研究員)、福田一史氏(立命館大学立命館グローバル・イノベーション研究機構・専門研究員)が務めるかたちで組織化されている。事業の大まかな目的・方針はチームの合議にて決定され、文献選定実務は井上氏・福田氏の助言を受けて松永が担当する形で進められた。文献の選定作業は2015年7月から2016年3月までの期間におこなわれており、その間、研究会・打ち合わせを3回、自由参加によるオープンなかたちでの報告会を2回、それぞれ行っている。報告会では、参加者からのフィードバックをもとに課題と問題点を洗い出すという形で事業は進展した。

・具体的活動

 前述の方針に従い、対象範囲として国際性・学際性に配慮すること、文献の重要度を測る指標として、古典性・発展性をあげ、それらに基づき文献選定を行うというプロセスで調査ならびに整理が行われたとしたうえで、松永氏は国際性・学際性は説明不要であろうと前置きし、ここでいう古典性とは、参照される事が多く文献ネットワークの結節点となりうる性質を評価するものであり、数多く参照されてきている古典的文献がここに当てはまり、発展性とは他の文献を多く引用・参照することに関する評価でありサーベイや入門書の類がここに含まれると説明を行った。

 外国語文献の選定については、ラウトレッジのゲーム研究の教科書『The Routledge Companion to Video Game Studies』をベースにその他の最新の教科書・入門書を参照しつつ推進されている。選別に際しては、雑誌論文やカンファレンスペーパーよりは、本や論文集を優先している。その理由は主に、個別の論文単位でリストに入れ始めると分量的に収拾がつかなくなるためである。

 日本語文献には、ゲーム研究の教科書と呼べるような文献は現時点ではないため、地道な選定作業が行われた。具体的には、候補になる文献をまず網羅的にピックアップしたうえで、そこからさらに選ぶという二段階選抜のかたちである。なお、邦訳文献もリストに含められている。

・ここで策定された文献リスト

 本活動を通じて、下記から構成される文献リストが策定された。

外国語文献
書籍 80
論文 6
博士論文 1
ウェブ文献 2
合計 89

日本語文献
書籍 70
博士論文 14
ウェブ文献 1
合計 85

 前述のとおり、書籍がその中心のリストとなっている。本リストはインターネット上で公開されている。
文献リストURL https://t.co/9YakOakF4U

・課題と展望

 本活動を通じて、松永氏は、現時点で下記の課題があると整理を行った。1)文献リストでは不十分であること、2)書籍中心のリストでは不十分なこと、3)古典性・発展性だけでは不十分なこと、4)候補の洗い出しが不十分であること、5)分野に偏りがあること、といった課題である。

 そのような状況を踏まえて、分類項目やタグの設定により文献を体系的整理する試みや、ゲーム研究の主要な発表媒体であるジャーナルリストの作成、選定基準と選定仮定の一層の明確化といったことが今後の展望として述べられた。

・講評・質疑応答

 企画委員よりターゲットを明確化することがリストの意義を向上させるだろうという点についてコメントがあった。松永氏も本件に同意し、そこを明確化することでマッピングのためのリストがより充実したものになるだろうと応答していた。

 また、領域間での共通度合いと分離の難しさが進展していることを踏まえ、分野間を横断するつながりの推進についてコメントがあった。本件について、分野間の横断の必要性を認めた上で、全体的パフォーマンス向上のためには、個々の分野における活動が主要であるべきことは変わらないだろうと応答した。

※詳細は下記チラシをご参照ください。

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