故ナムジュン・パイク氏(1932-2006)の誕生日である2012年7月20日より2013年1月20日まで、氏の誕生80周年を記念する特別展が韓国のナムジュン・パイク・アート・センターで開催される。生前の本人によって、「ナムジュン・パイクが永らく住む家」と名付けられて以来、一般的な記念美術館とは差別化する方向性を目指してきた当センターは、本展をきっかけに、館内をより観客に親和的な空間として再整備するなど、さらなる改革を試みている。

展示のタイトルは、本人の文書から引用した「ノスタルジアは拡張されたフィードバック」。第2代館長パク・マンウ氏は、「パイク氏にとって、ノスタルジアとは単純な郷愁ではなく、過去には不可能だった、未来に対する夢と情熱を反芻する実践行為だった」といい、通常の回顧展を超え、パイク氏の夢見た「過去の未来」を描く、科学・技術・哲学・文化・芸術のお祭りとして本展を企画したと述べる。

当センターとドイツに所蔵されているパイク氏の主要作品が公開される本展には、ダン・グラハム氏、マイケル・スノー氏、ヴァリー・エクスポート氏、ビル・ヴィオラ氏、久保田成子氏、アントニー・ムンタダス氏、オラファー・エリアソン氏、イ・ブル氏等の作品が含まれている。そして、ソウル市内の巨大スクリーンにおいては、パイク氏の「手と顔」「ビデオ・シンセサイザー」「マス・バイ・マス・バイ・パイク」が1カ月間上映される。

なお、関連イベントとして、オープニングの日には、1960年代前衛芸術運動集団フルクサスの同僚、小杉武久氏の講演と公演が、翌日には、ドイツと韓国を中心にパイク氏のテクニシャンとして活躍してきた、ヨヘン・ザウアラッカー氏とイ・ジョンソン氏の対談が行われた。

記念講演の途中、マイクと白紙で音を創り、パイク氏のパフォーマンスを再現した小杉氏の行為は、小杉氏本人をはじめとするパイク氏の知人にとって「ノスタルジア」であったはずだが、それと同時に、聴衆の半数をなす若い世代にとっては、歴史を新しく経験する瞬間として響いた。この場面が象徴するように、今後とも「ナムジュン・パイクが永らく住む家」が、故人の夢見た「過去の未来」を現在性の中で拡張させていく場となることを期待したい。

ナムジュン・パイク誕生80周年記念特別展:ノスタルジアは拡張されたフィードバック

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