2014年3月2日、アメリカ・ロサンゼルスで第86回米アカデミー賞受賞式が行われ、アニメーション作品を対象とした賞では、長編アニメーション部門で『アナと雪の女王』(クリス・バック、ジェニファー・リー監督、2013年)、短編アニメーション部門で『ミスター・ハブロット(Mr. Hublot)』(ローラン・ヴィッツ監督、2013年)が受賞した。今年の両部門には日本からそれぞれ『風立ちぬ』(宮崎駿監督、2013年)と『九十九』(森田修平監督、2013年)が最終ノミネート作品に名を連ねていたが、受賞はならなかった。
米アカデミー賞のノミネートおよび受賞作品については、この賞が実写映画を中心としたものでありつつも、アニメーション作品にとって最も大きな注目を浴びる機会でもあるというギャップから、アニメーション界隈からは常に批判的・否定的な色合いの論争が巻き起こる。
米アカデミー賞のノミネート作品は、アメリカ国内で興行が行われたことという条件のほか、米アカデミー賞が認定した映画祭での受賞作品なども対象となることから、映画祭で高い評価を受ける作品についてもノミネートや受賞の可能性がある。しかしそれゆえに、映画祭を中心とした短編アニメーションのシーンからは、そのチョイスについて違和感が表明されることが多い。今年度も、最終ノミネート前のショートリストの発表時、短編アニメーション部門の選考結果に対する不満が随所で発せられた(なかでも大きくフォーカスされたのはカナダのウェブマガジン「24 Images」に掲載された専門家による2013年トップ10企画であり、両者の比較から、アカデミー賞のリストの選定に疑問を呈するという観点のものだった)。
短編作品においては、映画祭と一般興行で受容の層が大きく異なるがゆえにこの種のギャップが生まれやすい。しかし、近年、アメリカの映画産業のなかでも大きな存在感を見せ、それゆえにアカデミー会員にとっても親しみがあるはずの長編アニメーション作品についても、同様の反発が起こっている。アニメーションを扱うアメリカの著名サイト「Cartoon Brew」では、「Hollywood Reporter」誌に掲載された映画芸術科学アカデミー会員のインタビューをもとにして、米アカデミー賞の投票資格のある会員が総じてアニメーションに対して関心がないことを明らかにする記事(「アカデミー賞投票者たちがアニメーションに無関心であることの決定的証拠」を発表した。そのなかでは、「アニメーションは6歳で卒業した」、「ノミネート作品は一本も観ていない」といった投票者たちの言葉や、この部門に対して投票を棄権している人物の多さから、アカデミー会員のなかで、アニメーション全体に対して冷淡なムードが漂っているであろうことを推測している。
アニメーションが実写のサブジャンルとしてみなされてきた歴史は長い。こういった反応からは、デジタル制作の隆盛から両者の境界線が曖昧になりつつあるとされる現在においても、アニメーションに対する(Cartoon Brewの表現を借りれば)「リスペクトなし」の状況が続いていることを知ることができるだろう。
米アカデミー賞公式サイト