ザグレブのKONTEJNER(クロアチア、*コンテナの意味)で、2012年10月10日から14日まで「デバイス・アート 4.012──機械、ロボット、そしてゆで卵(Device_art 4.012: Machines, Robots and Boiled Eggs)」展が開催される。KONTEJNERは、インターメディア(複合的メディアによる表現)や科学技術を使った作品のプロデュース、展覧会やパフォーマンスの企画などを国際的に行う非営利組織として2002年に設立した。多くのプロジュエトを展開するなかで「デバイス・アート」展は2004年から3年毎に開催する。2009年には岩井俊雄氏、岩田洋夫氏、明和電機、クワクボリョウタ氏を始め、IAMASの卒業生/在学生らなど多くの日本人アーティストが参加した。また、2010年には日本科学未来館で国外展を開催した。

今年で4回目を迎えた「デバイス・アート」展は、これまでの米国や日本発のデバイス・アートをめぐる旅を終えて、SF文化と総合的な科学技術の結晶といえる「ロボット」に着目し、そのルーツと現代のロボティック・デバイスを紹介する。

「ロボット」という言葉を創出した作家カレル・チャペック(1890–1938年)の生地であるチェコをはじめ、クロアチア、スロベニア、セルビアのアーティストによる作品、ライブ・パフォーマンス、ワークショップ、映画上映などを行う。スタンレイ・ポボーダ氏(Stanley Povoda、1945年−、チェコ)は、エレクトロニクス部分以外は廃品を使い、踊ったり、飲み物を注いだりするような愛らしいロボットを作っている発明家で、同展覧会では「ロボティック・コンサート(Robotic Concert)」を披露する。アンドレイ・ボレスラフスキー氏(Andrej Boleslavský、スロバキア/チェコ)は、調理器具をハッキング(改造/改変/改良など)して真空調理法でゆで卵を作るワークショップ「Sous-vide Device Hacking Workshop」を行う。ボレスラフスキー氏はプラハのCIANET (Inter National Center for Art and New Technologies)の研究員でもあり、「ラット/エトラ・ビデオ・シンセサイザー(Rutt / Etra Video Synthesizer *1972年に発明されたアナログ・コンピュータでブラウン管の走査線をリアルタイムに操作する装置)」から着想を得た作品《Hi Woody》も発表する。同作品は、かつて「ラット・エトラ・ビデオ・シンセサイザー」を作品に取り入れたことがあるウッディ・ヴァスルカ氏(1937年−、チェコスロバキア)と共に2011年に共同制作されたインスタレーションである。

ザグレブは、1961−1973年にかけて現代美術ギャラリー(現:ザグレブ現代美術館)で国際的なコンピュータ・アート展「ニュー・テンデンシーズ(New Tendencies)」を開催した都市で知られる。当時、展示された作品を、コンピュータによるアーティスティックなビジュアル・リサーチとしてとらえ「プログラムド・アート(Programed Art)」とも呼んだ。それは、アート・マーケットで流通するような特権的な美術作品とは異なる、人々へ開かれた美術への挑戦でもあった。「デバイス・アート」も同様に、エレクトロニクス、アナログ/デジタル技術を駆使して制作されたユニークな道具や装置は、人々がより身近に感じられる創造のフィールドを開拓しているといえる。

ザグレブ「デバイス・アート 4.012──機械、ロボットそしてゆで卵」開催
http://kontejner.org/device-art-4012-english