「メディア芸術連携促進事業 連携共同事業」とは

マンガ、アニメーション、ゲームおよびメディアアートに渡るメディア芸術分野において必要とされる連携共同事業等(新領域創出、調査研究等)について、分野・領域を横断した産・学・館(官)の連携・協力により実施することで、恒常的にメディア芸術分野の文化資源の運用・展開を図ることを目的として、平成27年度から開始される事業です。

*平成27年12月1日中間報告会が国立新美術館にて行われました。
*平成28年3月13日最終報告会が京都国際マンガミュージアムにて行われました。
*平成27年度の実施報告書はページ末のリンクよりご覧いただけます。

●「アニメーション・クリテイティブ・テクノロジー・フォーラム(ACTF) 2016」
日本アニメーター・演出協会(JAniCA)

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 本事業では「アニメーション制作に関わる現場事業者が必要とする、デジタル制作技術に関する情報提供の機会を創出する」ことを目的として、「アニメーション・クリテイティブ・テクノロジー・フォーラム(ACTF) 2016」を開催する。昨年度開催のACTF第1回にはアニメーション業界及び学校関係者・316人が参加したが、2016年は500名収容の会場を用意し、さらなるアニメーション・テクノロジーの情報交換の場となることを目指している。

●中間報告会レポート

 報告は一般社団法人「日本アニメーター・演出協会(JAniCA)」事務局長の大坪英之氏が行った。「(日本の)商業アニメーションの制作現場は法人単位で、非常に小さい所もあって、作業のデジタル化という負担の大きい研究開発は非常に難しい」と語った大坪氏は、しかし一方で「デジタル制作の要望というものが非常に高まってきている」とも指摘し、そういうニーズに応えて昨年東京でACTFを開催したところ、多くの来場者が訪れたことを伝えた。

 定例化を前提とせず、一日だけ開催された昨年のACTFには、300席の会場に対して事前申込者数・415名(招待、プレス含む)、実際には316名の来場受付があり、その内訳は商業アニメ制作の法人が95社で、人数にしてアニメ関連の業種なども含め276名。その中には代表取締役19名を始めとする、部門長などの経営者層も少なくなく、これはデジタル化の話であるだけに、システムの投資の判断が必要になるからだという。また関東に限らず福岡、京都のスタジオに加えてフランス、カナダ、シンガポールのソフトウェア開発メーカーからも広く来場者が訪れ、ペーパーレス作画をテーマにした初の大規模フォーラムとして、アニメーション制作従事者ならびにプロダクション・専門教育機関にいたるまで大きな反響を生み出したそうである。

 この成功を元に開催するACTF2016は2016年2月13日、東京の練馬ホールで行うことを予定し、「こういった(アナログからデジタルへの)変化というのは、現場の方からすると今まで手描きでしたので、大きな荒波に感じているのだろう」と思うと共に、「(アニメを)デジタルで作画することがすばらしいのではなくて、新作を作るのにデジタルという環境が、新たな何かを開くのではないか」と、期待しているとのこと。

 また報告の最後にあたって、ACTF2016開催に向けての以下のような課題も示された。

1) 登壇・発表を行いたい企業や団体から多く連絡があり、一日だけの開催が難しくなっている。

2) 東京から遠いスタジオなどから、大阪や福岡のようなスタジオ集積地以外でも開催してほしいという要望がある。

3) フランスやアメリカなど海外からの来場者も予定されているため、通訳が必要。 以上を報告として、続く質疑応答では、ACTFとは別に行われているJAniCA主催の勉強会について質問があり、大坪氏が詳細を説明。最後に「(ACTFは現場のデジタル化のすべてに関わる場にしたいので)現状は間口を広くしている」と付け加えた。

●最終報告会レポート

報告者 一般社団法人日本アニメーター・演出協会 小山敬治氏

 本事業は文化庁と一般社団法人日本アニメーター・演出協会(JAniCA)ACTF事務局が主催し、株式会社ワコム、株式会社セルシスが共催して、一般社団法人日本動画協会、一般社団法人練馬アニメーション、一般社団法人デジタルコンテンツ協会、公益財団法人画像情報教育振興協会(CG-ARTS協会)が後援となり、練馬区の協賛と学校法人片柳学園、日本工学院専門学校、アニメ・ビジネス・フォーラム+2016(デジタルハリウッド大学国際アニメ研究所・同大学院アニメラボ)の協力を得て、2016年2月13日(土)に練馬区のCoconeriホールにて開催した。

 本事業の開催の背景として、日本の伝統的セルアニメーションの作画工程ではデジタル化が遅れていることがある。動画をスキャン後の撮影工程はデジタル化が進んでいるが、作画のデジタル化が遅れたのには鉛筆の線1本の微妙な演技をつけるにはハードウェアが追いついていなかった為であったが、近年ハードウェアの進化が追いついてきて、様々なツールができてきている。例えば日本の株式会社セルシスのCLIP STUDIO PAINT PRO、カナダのToonBoom Animation、フランスのTVPaint Animation11、シンガポールのCAANiが上げられる。しかしどのソフトがベストであるかの結論は出ていない。これからの技法を模索するためにACTFが開催された。

 開催においてはメインホールではメインセッションを実施し、研修室のセミナーではソフトウェアの詳細な説明を行い、産業イベントコーナーでの展示ではテーブル毎に各会社から個別に説明をして頂いた。またメインセッションはサテライト会場として神戸、九州、新潟へ映像をUSTREAMによるインターネット中継を行った。来場者数は事前受付数396名に対し、当日の来場者数299名であった。内訳はアニメーション制作事業者241名、教育関係25名、官公庁・団体5名、プレス16名であった。またアンケート結果からは、来場者の年齢は20代、30代、40代とアニメーション制作の実務に係わる年齢の方々が来場されており、参加動機は情報収集や導入検討などが主であった。メインセッション、セミナーの感想は非常に良い、良いが半数以上を示す結果となっている。そして次年度開催希望については96%の方が開催を希望する評価を頂いたとのこと。

 まとめとして、昨年より会場のキャパシティを増やしたにも係わらず、募集開始後2週間を待たずに定員に達した。サテライト会場の拡張などの新たな挑戦を加えながらも来場者からは好評を得る事ができた。しかしそのニーズにはバラツキが大きかった。デジタル化の指向の強いアニメーターの来場が多かったが、業界の大部分を占めるが来場者としては少ない鉛筆アニメーターへの訴求と、会場でのQ&Aを充実させて現状の議論に共感を喚起する工夫にも今後は力を入れたい。サテライト会場のように、プロダクション工程のデジタル化は制作の遠隔地分散に有利に機能することから、一層の地方への情報発信は計り知れない価値があると報告された。

 次年度に向けては、キャンセルを減らすため、来場者の管理方法をチケット送付式にするなどの改善を検討し、施設の更なる効率的な利用を考え、設営と撤収に充分な日程を確保し、複数日の拡大運営も検討したいとのこと。

講評・質疑応答

企画委員より

  • 「日本の商業アニメーションが鉛筆からデジタル作画ツールに変わる大変な時期であるが、個人のアニメーターだけでなく、プロダクションも企業としては体力があるわけではないので、個々に研究するよりもこういった場で、メーカーや先行して使用しているプロダクションらと情報交換できることに非常に熱気と充実したものであると感じた。これからも継続して頂きたいが、これは文化庁よりも経産省の産業的な変革のアシストも必要かと感じる。」
  • 「このACTFの意義は誰も疑いようがない。誰がどう実践していくのかという実現に向けた内容も開催して頂きたい。またフォーラム開催だけでなく通年を通じた情報発信を今後の課題として検討して頂きたい。」

【実施報告書PDF】

報告書表紙画像

報告書PDFダウンロード(2.8MB)

本報告は、文化庁の委託業務として、メディア芸術コンソーシアムJVが実施した平成27年度「メディア芸術連携促進事業」の成果をとりまとめたものです。報告書の内容の全部又は一部については、私的使用又は引用等著作権法上認められた行為として、適宜の方法により出所を明示することにより、引用・転載複製を行うことが出来ます。