概要
アニメーションブートキャンプは、アニメーション産業界と教育界とが連携して、これからの時代に即した人材の育成における様々な課題を明らかにし、ワークショップの実践を通じて解決する、人材育成プログラムの開発を目的とした事業である。岡本美津子(東京藝術大学大学院教授)をプロデューサー、竹内孝次(アニメーションプロデューサー)と布山タルト(東京藝術大学大学院教授)をディレクター、面高さやか(アニメーション制作・プロデューサー)をマネージャーに据え、現役アニメーターやアニメーション監督らに講師として協力頂く。一線で活躍するアニメーターに指導してもらう機会として、アニメーター志望者から好評を得ており、優秀なアニメーターに教え方を意識してもらうことで後進育成にも貢献している。また、ワークショップへは教育機関などの見学者を募り、現場で意見交換をおこなうなど各方面と連携を図りながら事業を推進する。ワークショップ時には13台のカメラを使用し、各グループの講師とのやりとり、学生の手元の様子などを撮影し、本事業で得られる成果の可視化・アーカイブ化を試みる。具体的には将来の教育研究、教材化等の検討に使用可能な素材の記録を進める。
中間報告
報告者:東京藝術大学大学院 映像研究科アニメーション専攻 教授 布山タルト
本事業は2012年度から実施しているが、今回は昨年度試験的に実施した3DCGを使ったワークショップのカリキュラムを発展させ、これまで開催されていた手描きアニメーションの合宿型ワークショップに3DCGアニメーションのワークショップを混在させる形で同時に行った。
また、本年度はワークショップ開催の告知にtwitter広告を活用し、参加対象のターゲットに対して静止画と動画広告合わせて約58万回表示した。結果、募集期間中の公式ホームページへのアクセスが昨年度比4.8倍となり、最終的な応募者も昨年度比2.3倍の49人となった。
布山タルト
最終報告
報告者:東京藝術大学大学院 映像研究科アニメーション専攻 教授 布山タルト
「アニメーションブートキャンプ2017」を11月10日~13日(3泊4日)開催し、12月に最終講評会およびスタジオ見学を行った。技術のベースとなる動きを考えることに集中した合宿と、アニメーターを志望する参加者の職場見学は本年度も好評で、アンケートに回答した全ての参加者が参加してよかったと答え、9割近くの回答者が短い期間の中で気付きなどの変化があったと答えた。
合宿の概要
日程:11月10日(金)~13日(月)(3泊4日)
会場:川崎市八ヶ岳少年自然の家(長野県諏訪郡富士見町)
参加者人数:24名
講師人数:14名
見学者:14名(教育機関、アニメ業界関係者、富士見町長ら)
参加者データ(計24名)
手描き:21名、3DCG:3名
男性:9名、女性:15名
平均年齢:21.4才
最年少:20才、最年長:28才
居住地:東京、神奈川、埼玉、茨城、静岡、愛知、京都、大阪、兵庫、石川
大学生:19名、専門学校生:4名、新人アニメーター(1年目):1名
本年度のチャレンジとして、手描きだけでなく、3DCGアニメーターも対象としたプログラムへの発展を視野に入れ、手描きチームと3DCGチームが同じ課題に取り組んだ。また、ワークショップを「丸ごと」ビデオ記録し、将来的な指導者育成用教材としての活用を目指した。
参加者公募の審査方法は歩きの作画課題、全身自画像、ポートフォリオ(任意)等による総合評価。参加者公募の3DCGアニメーターの選考も同様の方法で行った。しかし、キャラクターアニメーションの制作経験やツールへの習熟など、最低限の技術は必要で、3DCGはポートフォリオ提出を義務づけるべきであった。
3DCGではツールはFoundry社のMODOを使用し、モデルデータは昨年のテストケースで使用したものをベースとして作成(協力:株式会社 武右ェ門)した。ワークショップの状況を省みると、参加者が普段使い慣れているツールにするか、合宿前に1日形式のワークショップを行うなどの対策や、事前の入念なリグ(モデルの骨格)のテストの必要性を感じた。
指導方法・学習環境としては、手描きのグループと3DCGのグループが隣接し、お互いの作業が見える状態で合宿を行った。反省点としては、3DCG講師は最低でもふたりは必要だと感じた。今後、3DCGの講師の発掘や手描き講師との更なる連携が望まれる。また、ワークショップ中に3DCGの途中成果を「みんなで見る」為の簡便な仕組みづくりも進めたい。
WSの記録アーカイブは、13台のビデオカメラによる多角的・包括的な記録(5TB)を実施した。今後、「教え方を学ぶ」ための教材化(ケーススタディ教材)や教育プログラム開発のための研究リソースとしての活用案を考えている。
※敬称略