エンターテインメント部門
エンターテインメント部門の展示では、優秀賞のINDUSTRIAL JP『INDUSTRIAL JP』、新人賞の石川 泰昭/ミカヅキ フタツ/Keishi Kondo『盲目の魚-The Blind Fish-』といった映像作品の他、優秀賞の『Pechat』開発チーム(代表:小野 直紀)『Pechat』、新人賞のMária JÚDOVÁ / Andrej BOLESLAVSKÝ『Dust』、佐々木 智也/MHD Yamen SARAIJI『MetaLimbs』など、体験型の展示も多い。
優秀賞の米辻 泰山『PaintsChainer』は、アップロードした線画をAIが自動着色してくれるウェブアプリケーション。展示されている模型をタブレット越しに見ると、人間の脳内にある神経細胞(ニューロン)とそのつながり(神経回路網)を計算機上のシミュレーションによって表現することを目指した数学モデル「ニューラルネットワーク」を使用して画像生成を行う際、どのような計算が行われているのかを可視化したARが現れる。会場で米辻は「ニューラルネットワークが作品として出ていく、その先駆けになれば」と述べた。
大賞の『人喰いの大鷲トリコ』の展示では、作品と同じAI技術によって動く等身大のトリコが壁に投影され、撫でるような仕草をすると反応し、移動すると目で追ってくる。また、トリコの好物の樽と苦手な目の模様の色ガラスが用意され、それらをトリコに近付けると特別な反応をする。『人喰いの大鷲トリコ』開発チームの代表・上田 文人は、「AI技術によるコントロールできない偶然性やゲームでしか味わえないドラマを楽しんでもらいたい。ビデオゲームの可能性を感じていただけたら嬉しい」と述べた。
最後の展示は、優秀賞の『FORESTA LUMINA』だ。森をプロジェクションマッピング、ライティング、サウンドエフェクトなどを駆使してコンテンツ化し、その地域の神話や伝説にインスパイアされた魔法の物語を体験できる作品で、会場では紹介映像が投影されている。また、会期中は『FORESTA LUMINA』制作チームが手がけたISLAND LUMINA(長崎県・伊王島)とのキャンペーンを行っている。
エンターテインメント部門大賞 『人喰いの大鷲トリコ』開発チーム(代表:上田 文人)『人喰いの大鷲トリコ』
© 2016 Sony Interactive Entertainment Inc.
エンターテインメント部門優秀賞 『FORESTA LUMINA』制作チーム『FORESTA LUMINA』
© Moment Factory
エンターテインメント部門優秀賞 INDUSTRIAL JP『INDUSTRIAL JP』
© 2018 INDUSTRIAL JP
エンターテインメント部門優秀賞 米辻 泰山『PaintsChainer』
© 2017- Preferred Networks, inc.
エンターテインメント部門優秀賞 『Pechat』開発チーム(代表:小野 直紀)『Pechat』
エンターテインメント部門新人賞 石川 泰昭/ミカヅキ フタツ/Keishi Kondo『盲目の魚-The Blind Fish-』
エンターテインメント部門新人賞 Mária JÚDOVÁ / Andrej BOLESLAVSKÝ『Dust』
© 2017 Mária JÚDOVÁ / Andrej BOLESLAVSKÝ
エンターテインメント部門新人賞 佐々木 智也/MHD Yamen SARAIJI『MetaLimbs』
功労賞
会場の中央には、功労賞を受賞した田宮 俊作と竹内 オサムの功績が紹介され、インタビュー映像も見ることができる。
田宮 俊作は、世界で高い評価を得ている日本のプラモデル業界を草創期から牽引してきた。模型化する対象を精力的に取材してパーツの精度の高さや組み立てやすさに繋げていく、その精神は後進にも受け継がれており、日本のものづくり教育にも貢献している。会場には、時代を代表するイラストレーターを起用した「ボックスアート」と呼ばれるパッケージの箱絵が並ぶ。
竹内は1970年代より手塚 治虫をメインにマンガ研究を始め、日本で本格的なマンガ研究の分野を興そうと多くの評論、マンガ研究書を上梓している。竹内は「40年前からマンガ研究をしているが、当時は大人がマンガを読んでいることは奇異に見られ、マンガを研究していると言いづらかった。マンガ年表や目録、マンガ研究のテキストなど、マンガ研究者の支えになるのでは」と語った。会場には竹内が1997年に創刊したマンガと児童文化の評論研究誌『ビランジ』などの著書が展示されている。
功労賞を受賞した田宮 俊作
功労賞を受賞した竹内 オサム
本展は30点以上の作品が一堂に会した内容の濃い展示であった。会場でしか見られない貴重な資料や展示に加え、インタラクティブな展示も多く、メディア芸術初心者でも充実した鑑賞体験が得られるだろう。
メディア芸術の時代(いま)を映す『第21回文化庁メディア芸術祭 受賞作品展』は24日(日)まで開催され、会期中には受賞作家によるトークや上映会などの関連イベントが多数行われる。
(作品情報)
第21回文化庁メディア芸術祭 受賞作品展
会期:2018年6月13日(水)~6月24日(日)
会場:国立新美術館、TOHOシネマズ 六本木ヒルズ、インターナショナル・デザイン・リエゾンセンター、スーパー・デラックス、表参道ヒルズ、ルミネ新宿 他
入場料:無料
主催:第21回文化庁メディア芸術祭実行委員会
http://festival.j-mediaarts.jp