概要
1970年代以降のゲームコンテンツおよびゲームビジネスに携わった人々を念頭に置き、分野横断的に調査対象を設定し、聞き取り調査を行ってその記録を整備し、後世のゲーム制作、文化的財とビジネスの橋渡し、研究に資する根本資料を提供することを目指す。その手段として、オーラル・ヒストリーの収集と蓄積を行う。
オーラル・ヒストリーやインタビューはいくつか行われているものの、取り組みが散発的で、その対象が偏っており、さらに厚みが不十分である。本事業ではより多くの作品に関わった人物、さらにはゲームコンテンツを販売し、開発・制作に必要な人材や資金を調達した人々にも焦点を当て、体系的に聞き取りを行い、その記録を整理する。
実施体制としては、一橋大学イノベーション研究センターを研究推進責任者として、立命館大学ゲーム研究センター、筑波大学大学院システム情報工学研究科の研究者と共同して進め、ゲーム開発企業やメディア・流通などのゲーム周辺産業などにインタビュー調査を行う。
中間報告
報告者:立命館大学 衣笠総合研究機構 専門研究員 福田一史
現段階では、一般社団法人日本オンラインゲーム協会・事務局長兼株式会社コラボ・代表取締役川口洋司、株式会社アドバンスクリエート・代表取締役、元株式会社セガ・代表取締役社長の佐藤秀樹、東京工芸大学・芸術学部・教授の岩谷徹への計4回のインタビューを実施した。
福田一史
最終報告
報告者:一橋大学 イノベーション研究センター 木村めぐみ
中間報告までに行った聞き取り調査の時間数と記録(ワーキングペーパー)の総ページ数は以下の通りである。
川口洋司(一般社団法人日本オンラインゲーム協会・事務局長兼株式会社コラボ・代表取締役):合計約9時間、234ページ
佐藤秀樹(株式会社アドバンスクリエート・代表取締役、元株式会社セガ・代表取締役社長):合計28.5時間、657ページ
岩谷徹(東京工芸大学芸術学部教授):3時間、65ページ
仁井谷正充(元株式会社コンパイル社長、現コンパイル丸株式会社社長:3時間、100ページ
石井ぜんじ(元株式会社新声社、アーケードゲーム雑誌「ゲーメスト」の元編集長):3時間、77ページ
当初は、前年度の結果をふまえリストアップした人物をインタビューする計画だったが、本年度の事業開始が遅れたため、計画の実施が難しくなった。そのため本年度は、事業期間内で聞き取りができる重要な人物を選定するところから事業を開始した。
なお岩谷徹については、ゲーム産業史上において特に貴重な証言が聞けることから、前年~本年度の事業開始まで間を置かず、自主的に継続して、合計3回の聞き取り調査を行った。本年度に1回、前年度に1回実施した分と合わせて、合計5回実施した形になる。また、本年度に聞き取り調査を実施できなかった人物については、次年度以降の聞き取りのために、事業内容や日程などを継続的に交渉していく予定である。
前年度から本年度にかけて収集したオーラル・ヒストリーは、ウェブサイトで公開するため、前述した手順を経て公開用のワーキングペーパーを完成させ、一橋大学イノベーション研究センターリサーチライブラリ(http://pubs.iir.hit-u.ac.jp/)に順次アップロードを行った。
また、インタビュー内容の裏付けのため、事業メンバーが知らなかったゲーム機やソフトなど資料の収集を兼ねて、株式会社アスコン東京オフィス、高井商会の2社を訪問・取材した。
本年度は聞き取り調査の実施に加え、その内容を元にワーキングペーパーを作成し、ゲーム産業における貴重な情報を数多く公開することができた。来年度以降も、本年度に聞き取り調査を実施できなかった人物に対し、本事業への協力を引き続き交渉し、なるべく多くのオーラル・ヒストリーを後世に残せるよう邁進したい。
また、本年度に聞き取り調査を実施した、各氏の証言に基づくスノーボール・サンプリング、新たな聞き取り対象者に対する聞き取りを進め、引き続きゲームビジネスの成り立ちを記録として残すことに努めたい。
木村めぐみ
※敬称略