概要

「アニメーションブートキャンプ」は、アニメーション産業界と教育界とが連携して、これからの時代に即した人材の育成についての課題を明らかにし、実践を通じてそれらを解決するという、人材育成プログラムの開発を目的とした事業である。本事業では、産学共同ディレクター体制のもと、産学の垣根を越えたさまざまな立場の人たちが、知恵を出しあい、その知恵を共有する、という人材育成におけるプラットフォームとなることを目指している。
本年度は短期型と合宿型、合わせて約60名の参加者を迎えてワークショップを開催し、昨年度の3DCGプログラムの実施で得られた課題を解決してプログラムの確立を進める。また、新しい取り組みとして過去6年にわたり実施したワークショップ参加者に対し、ヒアリングおよびアニメーション業界への就職状況のWEB調査を実施する。

中間報告会レポート

報告者:東京藝術大学大学院 映像研究科 アニメーション専攻 教授 布山タルト

8月実施の短期型ワークショップには、17〜47歳までの参加者40名が集まった。動きの要となる「キーポーズ」を見つけ出すことをテーマに、初心者でも扱える簡易な機材のみで実施できるよう改善し、地方開催など今後の展開も期待できる成果を得られた。11月中旬に開催予定の合宿型ワークショップでは昨年度の反省を生かし、3DCGのチームを3チーム、講師を3名に増やし、2Dと3DCGそれぞれの講師が行き来する指導が行えるよう、機材やカリキュラムなどの準備を進めている。
先日実施したWEB調査では、調査対象者228名のうち約130名が現在アニメーターとして活躍していることが分かった。
※過去6年間のワークショップ参加者総数は285名。現在学生の35名と、合宿・短期の両方に参加した人22名を除いた就職状況の調査対象者は228名。

布山タルト

最終報告会レポート

報告者:東京藝術大学大学院 映像研究科 アニメーション専攻 教授 布山タルト

8月27日開催の1dayチャレンジ(短期型ワークショップ)には41名、11月23日〜26日の4days(合宿型ワークショップ)には21名が参加した。4daysでは、2D受講者12名につき2D講師5名、3DCG受講者9名につき3DCG講師3名で対応した。
1dayでは、地方開催を視野に入れた新カリキュラムを開発し、作画用機材の不使用や撮影機材の簡素化など、最小限の機材環境での実施に手応えを感じることができた。また、絵コンテではなくサムネイルを用いてキーポーズを見つけ出す指導方法を開拓しその有用性が確認できたが、プログラムの成熟には更なるブラッシュアップが望まれる。また今後の展開として、1day規模のワークショップの地方開催パートナーの開拓や、教員向けのワークショップの開催などのアイディアがあがった。
また4daysでは、昨年度より実施している3DCGプログラムの指導方法を改善した。昨年度の反省を踏まえ、3DCGチームのみ1日前に事前オリエンテーリングを行った。そこではソフトウェアの使い方を経験者が未経験者に教えたり、パントマイムなどで実際に体を使い動きの観察を行ってから、サムネイルによるキーポーズの発見をするなどを合宿に向けての準備作業を行った。そのほか、モデルデータ・使用機材等も改善し、基本カリキュラムを改善することができた。今後は3DCGチームの規模拡大に向け、オープンソースのBlenderへの移行や3DCG講師の開拓の必要性を感じた。
そして、本年度はこれまで7年間の受講者285名のその後の就職状況について追跡調査を行い、成果をまとめた。その結果、これまでの受講者285名のうち127名がアニメ業界で活躍しており、そのうち初期の参加者は原画担当になっている者も多く、他にも劇場版アニメーションの助監督や演出助手を務めている者も確認できた。OB/OGを対象としたヒアリングでは、「ブートキャンプへの参加が進路の選択に大きな影響を与えた」「ブートキャンプで学んだことが現場で悩んだ時の指針となっている」など、ポジティブな意見が聞かれ、OB/OG同士の横のつながりも一部だが生まれはじめている。今後はOB/OGのネットワーク構築や彼らが再びアニメーションブートキャンプに講師アシスタントとして参加するといった可能性も検討したい。

実施報告書(PDF 約7.3MB)

※敬称略