概要

優れたマンガ翻訳家を発掘・育成すると同時に、海外で受け入れられる可能性を持つ未翻訳作品を海外の出版社やプラットフォーム等を通じて出版することを目指す。授賞式の際には国内外の翻訳者や編集者、出版・配信関係者をパネラーに招いてのシンポジウムを行い、将来的な人材の育成・市場の開拓に寄与し、多くのユーザにマンガの海外展開に対して興味を持ってもらうことを目指す。
今回は、マンガ作品『egg star』『みやこ美人夜話』に加え、新たな試みとしてライトノベルから『京都寺町三条のホームズ』を対象作品とした。その中から9名の最終候補者を選出、3名の大賞・作品賞受賞者は対象作品の正規翻訳者としてデビューする。
また、昨年度の反省を踏まえ、一般読者も参加できるイベントとして、今までの受賞者やプロの翻訳家が課題作を翻訳してトーナメント形式で腕を競い合う新企画「Manga Translation Battle of Professionals」を開催する。

中間報告会レポート

報告者:株式会社集英社 ライツ事業部海外事業課 関谷博

今年はSNSでの告知はもちろん、New York Comic-Conでインタビューを受けるなど、例年以上にプロモーションに力を入れた。その結果、応募総数は194件、マンガ作品より文字数の多いライトノベル作品にも50件と予想以上の応募があった。新企画「Manga Translation Battle of Professionals」は、現在1st Round『中間管理録 トネガワ』が終了し、1000件近い投票を得られた。2nd round『パタリロ!』3rd round『キングダム』も引き続き行う予定だ。
本事業は第7回を迎えるが、今まで裏方として活躍していた翻訳家が自分からSNSで発信するようになるなど、マンガ翻訳に対する当事者の意識変化も見られるようになった。以前から課題とされている多言語展開についても、特にニーズのある中国・フランスを視野に審査体制を整えて行きたい。

関谷博

最終報告会レポート

報告者:株式会社集英社 ライツ事業部海外事業課 関谷博

第7回マンガ翻訳コンテストは、SNSでの告知やNew York Comic-Conでのプロモーション、インタビュー取材を受けるなど、コンテストの周知に努めた。初の試みとなったライトノベルにも、翻訳の分量が多いにも関わらず50件の応募があった。また、今年度は一般読者が参加できる「Manga Translation Battle of Professionals」を開催した。プロの翻訳者がトーナメント形式でマンガ翻訳の腕を競う本エキシビションには、過去のマンガ翻訳コンテストの受賞者を中心に、キャリア20年以上のベテラン、マンガ以外にゲームやアニメなども手がける翻訳者ら計8人が参加した。優勝は、第6回(前回)マンガ翻訳コンテストの大賞受賞者であった。

第7回マンガ翻訳コンテストの結果は次の通りである。
応募総数
egg star(戸田誠二/宙出版):107件
みやこ美人夜話(須藤佑実/祥伝社):37件
京都寺町三条のホームズ(望月麻衣/双葉社):50件
合計:187件

大賞(1作品)
『みやこ美人夜話』
Molly Karinen(モリー・カリネン)(米国)
作品賞(2作品)
『egg star』
Thomas Threlfo(トーマス・スレルフォ)、Alex Liobis(アレックス・リオビス)(オーストラリア)
『京都北町三条のホームズ』
Minna Lin(ミーナ・リン)(カナダ)

Manga Translation Battle of Professionalsの結果は次の通りである。
課題作品
Round1 『中間管理録 トネガワ』(原作:萩原天晴、マンガ:橋本智広・三好智樹、協力:福本伸行、講談社)
Round2 『パタリロ!』(魔夜峰央、白泉社)
Round3 『キングダム』(原泰久、集英社)

優勝者
Preston Johnson-Chonkar(プレストン・ジョンソン・チョンカル)(米国)

1月30 日に開催された第7回マンガ翻訳コンテストの授賞式では、審査員から翻訳の落とし穴やアドバイスなどが発表された。また、会場には『みやこ美人夜話』の須藤佑実、『egg star』の戸田誠二が参加しており、受賞者と直接会う機会も持つことができた。 シンポジウムでは、日本と韓国におけるデジタルマンガの発展や韓国発のウェブトゥーンなどの現状が紹介され、ウェブマンガの海外事情を垣間見る貴重な機会となった。シンポジウムの参加者は過去最高の163人で、マンガ翻訳コンテストへの関心の高まりが感じられた。「Manga Translation Battle of Professionals」も、マンガ翻訳コンテストの受賞者のその後の活躍をみられるよい機会となった。今後は翻訳者・読者双方の参加者の増加と、応募者の組織化・ネットワーク化を進めていくことが課題である。

実施報告書(PDF 約2.3MB)

※敬称略