海外の盛り上がりとは裏腹に、国内で活躍の場を失いつつある怪獣たち。かつて銀幕やブラウン管で所狭しと暴れ回っていた彼らは、もはや絶滅危惧種と言ってもいいだろう。しかし日本の子どもたちが、かの恐ろしくも愛らしい異形の獣に対する興味の一切を失ってしまったわけではない。地上から滅び去ったかに見える恐竜が、鳥となって繁栄を続けているように、怪獣もまた姿を変えて生き延びようとしている!

左から「スーパーマリオ」シリーズ(1985~)より大魔王クッパ、『ドラゴンクエストII 悪霊の神々』(1987)よりシドー。ビデオゲームの敵キャラクターに、怪獣のようなデザインが採用されることは珍しいことではない

※写真はすべて筆者の私物のフィギュア

怪獣、冬の時代

2019年5月、マイケル・ドハティ監督による『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』が公開された。前作のメガホンを取ったギャレス・エドワーズと同様、ゴジラや怪獣に一家言ある人物が撮ったものであることが、ひしひしと伝わってくる映画になっていたように思う。来たる2020年3月下旬には、日米の誇る二大巨頭であるゴジラとキングコングが激突を果たす『Godzilla vs. Kong』の公開が決まっており、こちらの結果如何ではさらなる続編もありうるかもしれない。また、国内に目を向けると、ウルトラマンタロウの息子を主役に据えた『ウルトラマンタイガ』(2019)が放送中で、東映もネット配信限定ながら『シリーズ怪獣区 ギャラス』(2019)なる新作怪獣ドラマを発表している。『シン・ゴジラ』(2016)の大ヒットも記憶に新しく、令和に入っても怪獣界隈は順風満帆……と書きたいところなのだが、怪獣の登場するテレビシリーズが『タイガ』のみ(註1)という状況は、かつての怪獣ブームを思うと寂しいものがある。しかも近年の「ウルトラマン」シリーズは、コンスタントに新作が制作されているとはいえ、わずか半年間の放送というミニマムなスタイル。そこで描かれる主人公の成長や葛藤のドラマにおける怪獣の役割も決して大きなものではなく、新怪獣は数えるほどしか登場しない(註2)。だが、こういった傾向に異を唱える者は、毎週の新怪獣こそがシリーズの醍醐味と考える古いファンに限られ、メインの視聴者層である子どもたちは違和感なく受け止めているようだ。彼らの関心は、ほぼウルトラマンのみに向けられている。
私事で恐縮だが、筆者は自宅の庭で怪獣の着ぐるみを制作している。着ぐるみは2m近くあり、通りに面した作業場ということもあって、昼間に造っていると道行く人から大きな反応をされることも少なくない。ところが、そういった人々の大半は、怪獣ブームを経験している年配ばかりで、肝心の幼稚園児や小学生からは見向きもされないのである。これが怪獣ではなく、仮面ライダーを思わせるヒーローの着ぐるみであれば、あるいは子どもから注目を集められたかもしれない。変身ヒーロー番組そのものは、依然として大きな支持を集めているのだから。もっとも平成の「仮面ライダー」シリーズにしても、各エピソードに登場する等身大の怪獣=怪人の多くは、仮面ライダーの必殺技を見舞われるためだけに出てくるようなやられ役に過ぎず、物語を盛り上げる敵キャラクターといえば、禍々しくもスタイリッシュな“悪の仮面ライダー”たちだ(註3)。ソフトビニール人形やアクションフィギュアとして販売される敵キャラクターも、専らこういったダークヒーローばかりで、子ども向けの商品に怪人がラインナップされることは滅多にない。需要がないのだ。せいぜい大幹部などと呼ばれるレギュラーの怪人(註4)が、マニア向けの高額商品として限定発売されるくらいだろう。悲しいかな、怪獣・怪人が子どもたちの人気者だった時代は、とうの昔に過ぎ去ってしまった。

筆者の友人が中心となって、自宅で制作しているオリジナル怪獣の着ぐるみ。この写真のように、子どもが喜んでくれることはきわめて稀だ。(撮影/安田和弘)

ポケモンにチラつくウルトラ怪獣の面影

前述の怪獣ブームは、60年代、70年代、80年代に一度ずつ発生しており、90年代においても『ゴジラVSビオランテ』(1989)より始まるVSシリーズが大ヒットを飛ばしていた。特に最終作『ゴジラVSデストロイア』(1995)は、「ゴジラ死す」のキャッチコピーも話題を呼び、配給収入20億円という1996年の邦画第1位の好成績を残している。そして、この作品を期にゴジラは一時休眠期間に入る(註5)が、偉大なる怪獣王と入れ替わるようにしてガメラとウルトラマンが、十数年ぶりに復活を果たす(註6)。使徒と呼称される未知の怪獣軍団と巨大ロボットを駆る少年少女の戦いを描いたアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』(1995〜1996)の記録的大ヒットも、やはり同時期の出来事だった(註7)。どんな時代にも熱狂的な怪獣ファンは存在するだろうが、相当数の人間が怪獣に関する思い出を抱いている世代となると、こういったムーブメントに接していた少年少女たち=現在の30代が最後になるだろう。ゼロ年代以降は、イケメンヒーローブーム(註8)の牽引役となった平成ライダーシリーズの直撃世代になり、その嗜好は怪獣や巨大ヒーローよりも等身大ヒーローに偏っていく。
だが、日本人の異形に対する興味は、そう簡単に潰えることはない。怪獣は形を変えて、住処を移して、きちんとこの国に息づいている。住処とは、すなわちビデオゲームの世界である。かのマリオのデビュー作である『ドンキーコング』(1981)が、怪獣の始祖キングコングをモチーフとしているように、怪獣にヒントを得たモンスターが敵キャラクターとして登場するゲームは少なくない。ザ・ロックことドウェイン・ジョンソン主演の佳作『ランペイジ 巨獣大乱闘』(2018)も、『RAMPAGE』(1986)というアーケードゲーム(註9)を原作としていたし、都市建設ゲームの『シムシティ』(1989)に、災害のひとつとして怪獣が出現することは、あまりにも有名な話だ。もちろん、「ウルトラマン」シリーズや「ゴジラ」シリーズを題材とするキャラクターゲームの類だって、数え切れないほど存在する。ただ、ここで紹介したいと考えているタイトルは、こういったそのものズバリというものではない。もはや国民的ゲームと言っても差し支えない、「ポケットモンスター」シリーズなのである。

左から『ポケットモンスター 緑』(1996)のパッケージ、『怪獣大奮戦 ダイゴロウ対ゴリアス』(1972)より恐怖大星獣ゴリアス。大きな瞼を有するツリ目は、初期ウルトラ怪獣を創造した成田亨&高山良策のコンビが好んで用いた表現で、ゴリアスをはじめとする後年の怪獣にも受け継がれた。怪獣らしい怪獣を描くならば、是非とも抑えておきたいパーツであり、ポケモンのフシギバナにも“それ”を見つけることができる

ポケットモンスター、縮めてポケモンは、1996年にゲームボーイソフトとして登場した。ゴジラが死んだ、その翌年のことだ。1995年から1996年にかけての2年間は、怪獣史において非常に重要な意味を持つ時期だったといえる。もっともポケモンと怪獣のイメージが重ならないという向きもあるかもしれない。確かにシリーズの顔ともいえるピカチュウに、怪獣らしさを見出すのは難しい。しかしピカチュウは本来、ゲーム内に登場する全151匹のうちの1匹に過ぎず(註10)、多くのポケモンは怪獣のような外見の持ち主ばかりだった。モンスターと謳っているのだから、当然といえば当然の話だ。『ポケモン』では、プレイヤー同士で手持ちのモンスターを交換するという遊びが推奨されており、そのコンセプトを強化するべく、怪獣然としたイカついモンスターだけでなく、かわいいモンスターも用意されることとなったらしい(註11)。つまりピカチュウは、ユーザーの多種多様な好みに応えるべく、ゲーム開発途中で追加考案された1匹だったのである。
「ポケモン」シリーズについて、改めて説明しよう。ポケモンとは、モンスターボールという手のひらサイズのアイテムに格納することができる不思議な生き物。ゲーム内の人々にとっては収集対象であり、また愛玩動物でもある。彼らは、闘犬のようにポケモン同士を戦わせることにも熱心で、多くの街にポケモンバトルの腕を磨くためのポケモンジムが存在する。各シリーズの主人公たちは、ポケモンの研究者などから託されたパートナーの1匹とともに旅立ち、数多のポケモンを集めながらバトルの腕を磨いていく。『ポケモンレンジャー』(2006)などの派生作品に関しては、その限りではないが、20年以上放送され続けているテレビアニメも含めて、概ねこういった世界観やストーリーであると理解していただいて問題ない。
そしてファンにとっては有名な話だが、『ポケモン』第1作の企画タイトルは「カプセルモンスター」だった。そう、『ウルトラセブン』(1967〜1968)に登場するカプセル怪獣が、発想の原点として存在するのだ。カプセル怪獣は、主人公のモロボシ・ダンがセブンに変身できないとき、代わりに侵略者と戦ってくれる善玉の怪獣で、普段は小さなカプセルに収納されている。このコンセプトと、企画者である田尻智が少年時代に夢中になったという昆虫採集の要素が合わさり、のちの大ヒットゲームが誕生した。カプセル怪獣のように、元ネタとして明言されることはないものの、ウルトラ怪獣を思わせるルックスのポケモンを数えれば枚挙にいとまがない。

左から「ポケットモンスター」シリーズよりドサイドン、『ウルトラマン』(1966〜1967)より変身怪獣ザラガス。ドサイドンが身長2.4mであることに対して、ザラガスは40mと、設定サイズにこそ大きな開きがあるものの、外見だけ取り出せば兄弟怪獣のようによく似ている2体だ

怪獣は本来、人間の手には負えない驚異として描かれてきたが、『ウルトラマンガイア』(1998〜1999)では怪獣もまた地球に住む生き物という位置づけがなされ、一部の怪獣がウルトラマンや地球人とともに力を合わせるというクライマックスが用意されていた。さらに次回作『ウルトラマンコスモス』(2001〜2002)に至っては、なんと“怪獣保護”という前代未聞のテーマが前面に打ち出される。いつしか怪獣は、人間と共生可能な存在となってしまったわけだ(註12)。ここにポケモンの影響を見出すか否かは、人によって意見の分かれるところだろうが、2007年より展開された「大怪獣バトル」シリーズ(註13)は、バトルナイザーなる小さな端末から怪獣を呼び出して戦う少年や青年が主人公に設定されており、こちらは間違いなく「ポケモン」シリーズの影響下にある作品群だ。昨今の「ウルトラマン」シリーズでも、かつて見られた“野生”の怪獣はグッと数を減らし、小さな人形となって携帯されたり、カードやカプセル、クリスタルなどから召喚されたりすることが増えてきた。そのさまは、さながら巨大なポケモンである。一方のポケモンも、最新作『ポケットモンスター ソード・シールド』(2019)に登場するダイマックス及びキョダイマックスと呼ばれる特殊な現象によって、まさかの超巨大化変身を果たしている。いまやポケモンと怪獣は、≒で結ぶことのできる存在になったといえよう。ポケモンの登場は、祖先たるウルトラ怪獣のあり方を変質させてしまったかもしれないが、同時に「ポケモン」シリーズが売れ続ける限り怪獣が滅び去ることもなくなった。
さて次回は、累計販売本数5500万超という大ヒットゲームの「モンスターハンター」シリーズと、そのものズバリな怪獣も登場する「地球防衛軍」シリーズを取り上げて、いかに怪獣がゲームの世界に対応していったのか、何が怪獣を怪獣たらしめているのかを検証していきたい。


(脚注)
*1
『騎士竜戦隊リュウソウジャー』(2019〜)の敵キャラクターであるマイナソーは、完全体まで成長を果たすと、怪獣然とした竜型モンスターに変異するという設定がなされている。もっとも現時点(2019年10月)で完全体となったマイナソーは、第1話にしか登場していない。

*2
予算の問題もあって、すでに着ぐるみが存在する過去の人気怪獣ばかり登場する構成となっている。一見するとゴージャスなのだが、各エピソードと怪獣のキャラクター性との結びつきが薄く、極端なことをいえば、任意の話数に登場する怪獣を入れ替えても双方のストーリーはまったく変わらない……というようなことも珍しくない。

*3
『仮面ライダークウガ』(2000〜2001)や『仮面ライダーW』(2009〜2010)のように、怪人主体のドラマが展開される作品も、わずかながら存在する。一方、スーパー戦隊シリーズに関しては、作品毎にバラつきがあるものの、どちらかというと各怪人の個性を生かしたドラマづくりがなされている。

*4
数クール、あるいは1年間の放送にまたがってレギュラー出演する怪人たちのこと。生身の俳優が演じる“人間態”を隠れ蓑として行動することが多く、番組後半にて第三、第四の仮面ライダーとして、ヒールからベビーフェイス転向を果たすこともある。

*5
次回作は、ローランド・エメリッヒ監督によるハリウッド版『GODZILLA』(1998)だった。なお、東宝は東宝で、モスラを主役に据えた平成モスラ三部作を制作している。

*6
『ガメラ 大怪獣空中決戦』(1995)と『ウルトラマンティガ』(1996〜1997)。いずれも平成三部作と呼ばれるシリーズを展開しており、今もなお高い評価を得ている。

*7
厳密な話をすると、エヴァンゲリオンは巨大ロボットではなく、ロボットのような装甲で覆われた人造人間(汎用人型決戦兵器)。ただし、『機動戦士ガンダム』(1979〜1980)以降のロボットアニメでは、ロボットをロボットとせず、モビルスーツやコンバットアーマー、アーマードトルーパーなどの独自の呼称を用いることが慣例となっており、その延長線上にエヴァ≠ロボットという設定がある。使徒に関しても同様で、劇中での扱いはどうあれ、怪獣には違いないと判断させていただいた。こちらもまた超獣、恐獣、魔獣、メカザウルスといった番組固有の言い換えパターンのひとつであろう。

*8
『仮面ライダー』(1971〜1973)に端を発する“変身ブーム”は、のちに“第2次怪獣ブーム”とも呼ばれるようになったが、こちらのイケメンヒーローブームを“第4次怪獣ブーム”と認識している人間は皆無だろう。視聴者の興味が、怪獣・怪人からヒーローへ完全に移行していることが分かる。

*9
本作における怪獣は敵ではなく、プレイヤーが操作するキャラクター。ゴリラ型怪獣のジョージ、トカゲ型怪獣のリジー、オオカミ型怪獣のラルフのいずれかを選び、軍隊を蹴散らし、街を破壊することでポイントを稼ぐ。

*10
のちに制作されたテレビアニメ版などとは異なり、主人公のパートナーとして物語に深く関わってくるような存在ではなかった。ただし、ゲーム開発中にとられた社内アンケートでは、ピカチュウが断トツの人気ナンバー1だったという。
株式会社ポケモン「ピカチュウ誕生秘話」
https://www.pokemon.co.jp/corporate/pikachu/

*11
ピグモンや快獣ブースカなど、ウルトラ怪獣にも愛らしい見た目の人気キャラクターは数多く存在する。

*12
もちろん、劇中においても怪獣と人間の共存は、きわめて実現困難な一種の理想論とされているが、ウルトラマンも含めて主要登場人物の大半が、同様の価値観を以て行動している点が、本作を唯一無二のものとしている。怪獣を退治せんとする防衛軍が、まるで悪役のように描写されることさえあるのだ。

*13
いわゆるメディアミックス企画で、アーケードゲームに始まり、のちにコミックや映像作品も作られた。古代怪獣ゴモラは、本シリーズを期に味方側のキャラクターとして登場することが多くなり、特に『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』(2009)では、宿敵ともいえる初代ウルトラマンと肩を並べて戦っている。

※URLは2019年10月29日にリンクを確認済み