令和3年度メディア芸術連携基盤等整備推進事業 中間報告会が、2021年10月19日(火)にDNP市谷加賀町ビル会議室およびウェブ会議システムZoomにて開催された。メディア芸術連携基盤等整備推進事業では、産・学・館(官)の連携・協力により、メディア芸術の分野・領域を横断して一体的に課題解決に取り組むとともに、所蔵情報等の整備及び各研究機関等におけるメディア芸術作品のアーカイブ化を支援している。また、アーカイブ化した作品・資料等を活用した展示の実施に係る手法等を開発・検討することにより、貴重な作品・資料等の鑑賞機会の創出、インバウンドの増加を図るとともに、アーカイブ及びキュレーションの実践の場として提供することで、今後のメディア芸術の作品等の収集・保存・活用を担う専門人材の育成を図っている。中間報告会では、本事業の一環として実施した5つの分野別強化事業の取り組みの主旨や進捗状況の報告と、各分科会の調査事業報告がなされ、有識者検討委員からの質疑や助言が加えられた。


事業報告
[マンガ分野]

  • マンガ原画アーカイブセンターの実装と所蔵館連携ネットワークの構築に向けた調査研究
    • マンガ刊本アーカイブセンターの実装化と所蔵館ネットワークに関する調査研究
    • [アニメ分野]

      • 全録サーバから生成したクレジット情報テキスト識別の高精度化とメタデータ処理の自動化の試行
      • [ゲーム分野]

        • ゲームアーカイブ所蔵館の連携強化に関する調査研究2021
        • [メディアアート分野]

          • メディアアート作品の調査とメディア芸術データベースのデータ整備他
          • 調査事業報告

            • コミュニティ分科会
              • 利活用分科会
                • アーカイブ分科会
                  • 分科会横断会議
                  • マンガ原画アーカイブセンターの実装と所蔵館連携ネットワークの構築に向けた調査研究

                    一般財団法人 横手市増田まんが美術財団
                    報告者:一般財団法人 横手市増田まんが美術財団 まんが美術館 館長 大石卓

                    大石卓

                    【概要】
                    昨年度は、横手市増田まんが美術財団がマンガ原画アーカイブセンターの設置・窓口開設を行うほか、所蔵館ネットワークの構築・専門人材の育成・収益事業体制の構築等もオンライン会議を通してそれぞれ成果を上げた。今年度は、マンガ原画アーカイブセンターの認知活動(主に出版社や漫画家協会等)を中心にセンターの実装をさらに進める。また、収益事業・支援体制構築の調査として「ゲンガノミカタ」展の完全パッケージ化と巡回支援を実施する。専門人材の育成の観点では、施設での保存以外を想定した保存者対象者別のアーカイブマニュアルの作成も検討する。さらに、所蔵館ネットワーク構築の新たな取り組みとして「原画プール」設置の実践研究を行う。また、集英社マンガアートヘリテージ(SMAH)と原画保存の共同研究に着手する。

                    【中間報告】
                    横手市増田まんが美術館内に開設したマンガ原画アーカイブセンターでは原画の保管や寄贈についての相談業務を開始した。現在、24件の案件に対応しており、そのうち1件のプールを実施済み。さらに、年度内までに5件のプールを実施予定。残りの18件は調査継続中である。また、収益事業確立や所蔵館支援体制構築の一環として「ゲンガノミカタ展」の巡回展を今年7~8月に高知県の高知まんがBASEで開催した。さいとう・たかを氏ら3人の作家の資料を新たに加えた「ゲンガノミカタ展」完全パッケージ版の制作も進めている。マンガ作家個人、制作プロダクション、出版社ではそれぞれに原画の保存手法や整理の考え方が異なるため、あらためてヒアリング調査を行い、各保存者に合ったアーカイブマニュアルを作成する計画である。このマニュアルは専門人材育成にも活用していきたい。

                    マンガ刊本アーカイブセンターの実装化と所蔵館ネットワークに関する調査研究

                    国立大学法人 熊本大学
                    報告者:熊本大学大学院 人文社会科学研究部(文学系) 准教授 鈴木寛之

                    鈴木寛之

                    【概要】
                    2023年10月のマンガ刊本アーカイブセンター(仮称)の設置準備に向け、センターの実装化に向けた調査研究、情報収集を⾏う。また、マンガ刊本のアーカイブに関する拠点およびネットワークを構築するとともに、横手市増田まんが美術館マンガ原画アーカイブセンターとのあいだで情報・知⾒・⼈材を共有・公開する機会を計画的に創出し、統合的かつ体系的な「マンガのアーカイブ」の連携基盤整備を推進する。

                    【中間報告】
                    マンガ刊本アーカイブセンター(仮称)開設に向けた調査研究や情報収集を継続している。刊本(単行本、雑誌)はすでに膨大な量が蓄積されており、その保存や利活用が大きな課題になっている。所蔵館とのネットワークを生かし、組織的に保存や利活用を進めるために、まずは熊本県内の複数の自治体と連携して実験的に刊本アーカイブを行い、そこでの実績や知見をモデルとして、都道府県単位などでの取り組みを全国に広げていきたい。その事業インフラとしてデジタルアーカイブやデータ管理システムは欠かせないツールとなるため、メディア芸術データベースとの連携も視野に入れながら、データをどう整備して共有するか、使い勝手のいい所蔵館リストをどう構築するかについて検討している。このほか、マンガ原画アーカイブ事業とつながりを強め、一体的な事業展開を図るためにアーカイブ協議会を設置しており、下期に第2回の会議を開催する予定である。

                    全録サーバから生成したクレジット情報テキスト識別の高精度化とメタデータ処理の自動化の試行

                    一般社団法人 日本アニメーター・演出協会
                    報告者:一般社団法人 日本アニメーター・演出協会 事務局長 大坪英之

                    大坪英之

                    【概要】
                    既存の調査やレポートからは、アニメの作品数、総制作分数、アニメ制作会社の売り上げ規模は把握できるものの、具体的な作品名やスタッフ、アニメ制作会社の数などについては明確に知ることが難しい。そのため、アニメのタイトル、スタッフに関するデータベース情報を補強し、発展させるための方策の⼀環として、放映中の地上波テレビアニメ番組を網羅的に録画して、クレジット記録の根拠となるデータ抽出を実現する試⾏を中⼼に実施している。

                    【中間報告】
                    クレジット画面の文字識別プロセスの高精度化のほか、メディア芸術データベースへのデータ投入を見据えたメタデータ処理の自動化にも取り組んでいる。昨年度まで画像ファイルから文字が表示された画面を手作業で選別し、画像認識サービス(OCR)を利用して文字識別していた。今年度から映像に出現する文字の有無を手がかりに、映像ファイルから直接、文字の出現数をヒストグラム化し、そこから必要な画面だけを取り出す仕組みに変更したことで、大幅に作業量を低減できた。また、人工知能(AI)を活用し、OCRで識別した文字の意味づけや、メタデータ処理後のデータをメディア芸術データベースに直接投入できるデータの構造や受け渡し方について検討している。

                    ゲームアーカイブ所蔵館の連携強化に関する調査研究2021

                    学校法人 立命館 立命館大学ゲーム研究センター
                    報告者:立命館大学 先端総合学術研究科 授業担当講師 尾鼻崇

                    尾鼻崇

                    【概要】
                    過年度までの活動を基盤として、産学官連携強化、アクションリサーチ・アウトリーチを三本柱として実施する。具体的には、各所蔵館の保存活⽤取り組みの知⾒共有等のためのセミナー開催、コンピュータエンターテインメント協会(CESA)協⼒の下、コロナ禍を⾒据えた産業界への調査、アーカイブ利活⽤の実情についての各種調査とこれまでの成果等のメディア芸術データベースへの登録準備を進める。また、オンライン展示等アーカイブ利活⽤・公開の⼿法についても議論し、動的なゲーム展示のための中⻑期的な施策についても、本事業がどのような社会的役割を担えるか検討する。

                    【中間報告】
                    今年度はこれまでの調査研究で得た知見を、より広範な領域で利活用し、また人材育成を推進することを目的に、メディア芸術データベースなどを通じて発信するアウトリーチの強化に取り組んでいる。具体的にはCESAが主催するゲーム開発者向けカンファレンスの資料や日本ゲーム大賞などの受賞作品リスト、各地の博物館でのゲームに関する展示や所蔵情報などについて、メディア芸術データベースへの登録がしやすいデータモデルのあり方を検討している。これが実現することで、これまで分断されてきたさまざまなデータベースを接続させることが可能となり、より利活用の可能性が広がると考えられる。
                    また、アクションリサーチとしては、昨年度、2021年1月から2月にかけて開催した「Ludo-Musica 〜音楽からみるビデオゲーム〜」に引き続き、コロナ禍でのアーカイブ利活用の試みとして、オンライン上でのゲーム音楽の展示サイト「Ludo Musica Ⅱ」を開設予定である。今年度はゲームのプレイ状況に応じて変化するインタラクティブミュージックについて特集することで「ゲーム体験のアーカイブの重要性とその課題」を検証する。また、美術館展覧会と連動する形でオンライン展示を実施予定であり、ハイフレックス形式でのゲーム展示の課題と可能性の調査を計画している。

                    メディアアート作品の調査とメディア芸術データベースのデータ整備他

                    特定非営利活動法人 コミュニティデザイン協議会
                    報告者:特定非営利活動法人 コミュニティデザイン協議会 理事長 野間穣

                    野間穣

                    【概要】
                    昨年度から継続して、文化庁メディア芸術祭受賞作品等の作品調査、メディアアート史の充実化およびウェブ版メディアアート史の運用・改修作業、メディア芸術データベースでの活用に向けたデータベース情報の整備を実施するほか、今年度からは関連団体や組織などとのネットワーク構築の準備作業にも着手した。

                    【中間報告】
                    文化庁メディア芸術祭受賞作品の調査では、昨年度のアート部門に引き続き、エンターテインメント部門を対象としている。メディアアート史の充実化およびウェブ版メディアアート史の運用・改修作業では、年表の利用テスト、追加データの検討を行い、改修した年表を成果物とすることを目標とする。データベース情報の整備では、山口情報芸術センター(YCAM)の保有データをメディア芸術データベース用に編集作業を行うほか、既存データのクレンジングも進める。また、関連団体などとのネットワーク構築に向け、調査や準備もスタートさせる。その一環として、メディア芸術データベースやウェブ版メディアアート史、用語辞典などの機能やサービスを統合したインターフェースを開発し、教育現場で教科書のようなツールとして活用することを目指すプロジェクトも立ち上げたい。

                    コミュニティ分科会

                    報告者:レインボーバード合同会社/一般社団法人 マンガナイト 代表 山内康裕

                    自治体や施設関係者を対象にした「ネットワーク構築ミーティング自治体連携会議」を8月に実施し、第2回は来年1月に開催する。 本事業の成果や意義を広く発信するイベントサイト「MAGMA sessions」は来年2~3月に公開・配信する予定で、準備を進めている。このほか、既存サイトを統合した新たな広報サイトの構築も計画しており、次年度以降の立ち上げを目指す。

                    利活用分科会

                    報告者:国際大学 GLOCOM 主幹研究員/教授 渡邊智暁

                    今年度、データセット利活用ワーキンググループ(WG)を設置した。WGではリンクトオープンデータ(LOD)活用コンテストに関わったり、市民セクターでLODの新たなデータづくりやアプリ開発に取り組んだりしている人たちをゲストに招き、メディア芸術データベース利活用の方向性やデータセット創出の具体策についてディスカッションしてきた。また、データセット活用促進を目的にしたオンラインイベントを年度内に実施する予定である。上半期の活動実績としては10月14日にデータセットやSPARQLエンドポイントを提供するサイト「MADB Lab メディア芸術データベース・ラボ」を立ち上げた。

                    アーカイブ分科会

                    報告者:ITコンサルタント/一般社団法人 コネクテッド社会研究機構 理事 三原鉄也

                    サービス・スキーマモデル設計、データ登録、ガイドライン作成の3つのワーキンググループ(WG)の活動により、メディア芸術データベースのデータや機能・サービスの充実を図っている。サービス・スキーマモデル設計 WG では将来的なシステム構成や機能のあり方を含め、次年度以降の改修について検討している。データ登録WGでは「MADB Lab」によるRDFストア公開に合わせたデータの拡充作業を進めている。ガイドライン作成WGではできるだけ連携機関側の作業負担を減らす方向で、データ登録フローを見直し、あらためて提案することにしている。

                    分科会横断会議

                    報告者:筑波大学 名誉教授 杉本重雄

                    横断会議は事業全体に関わる課題を整理し、解決に向けたロードマップを策定することをミッションとしている。「基盤を固めるテーマ」と「未来に向けたテーマ」に分けて、議論を行ってきた。基盤を固めるテーマとしては、今後収集すべきデータなどについて下期も継続して検討する。未来に向けたテーマではパイロットモデルの創出を中心に議論を重ねており、メディア芸術の情報とリアルツーリズムの地域情報をつなぐ「メタ観光」といったアイデアが出されている。
                     
                     
                     

                    ※URLは2022年1月12日にリンクを確認済み
                    ※すべて敬称略