8月にACM SIGGRAPH 2013開催のニュースをお届けしたが、2013年11月19日から22日にかけて香港でACM SIGGRAPH ASIA 2013が開催された。コンピュータグラフィクス(CG)とインタラクティブテクノロジーに関する国際会議であるSIGGRAPHが夏に主にアメリカを中心とした北米地域で開催されるのに対し、半年ずれた冬にアジア地域で同様の研究分野に関する最新成果が披露されるのがSIGGRAPH ASIAである。2009年に横浜で開催されたのを皮切りに毎年アジアの各都市を巡りながら開催されている。
SIGGRAPH ASIAでは論文形式で発表するTechnical Papers、先端技術のデモ展示Emerging Technologies、アート作品展Art Gallery、アニメーション作品を上映するComputer Animation Festivalなど、カテゴリに分かれて最先端の研究成果や作品が披露されるが、今回はその中で日本勢の活躍が目立ったEmerging Technologiesに出展された研究をいくつかピックアップして紹介したい。
電気通信大学の栗原洋輔氏らのグループが発表したJointonationは、人間の腕の動きに応じて、デバイスを通じて映像・音の提示に加えて振動刺激を与えることにより、まるで自分の身体がロボットになったかのような疑似感覚を作るという研究である。ビデオゲームにおいて、自分自身の身体がキャラクターになりきったような体験を与えるなどエンタテインメント分野への応用が期待される。
大阪大学のParinya Punpongsanon氏らのグループのDeforMeは、柔らかい素材に触れて変形させることにより、映像を直感的に操作するインタフェースである。人肌や粘土など柔らかい素材の変形をリアルタイムに計算するために、赤外線領域の光を吸収する特殊な不可視インクを用いて、素材表面にマーカを塗り、赤外線カメラでそのマーカパターンの移動や形状変化を追跡する。この技術を用いれば、プロダクトデザインなどのシーンにおいて、プロジェクションマッピングで表面にテクスチャを重畳しながら、クレイモデルの形状を作るなどの新しい創造手法が実現されそうだ。
なお、出展プロジェクトの概要映像をダイジェストでまとめたPreview TrailerもSIGGRAPH ASIAのウェブサイト上で見ることができる。アジアを中心に生まれる技術革新に今後も期待したい。
ACM SIGGRAPH ASIA 2013