東京にある明治大学米沢嘉博記念図書館では、2012年2月3日から5月27日にかけて、伝説的なマンガ雑誌「COM」についての展示がひらかれる。
「COM」は手塚治虫が関連していた虫プロ商事が1967年から1971年にかけて刊行していた雑誌。当初は虫プロダクション友の会発行の会報「鉄腕アトムクラブ」を引き継いだという面もあって、手塚の個人誌的な色合いも強かったが、さまざまな新人作家や実験作が数多く載せられていた。この雑誌から巣立った作家としては、青柳裕介、あだち充、岡田史子、竹宮惠子、能條純一、日野日出志、諸星大二郎、宮谷一彦、やまだ紫などがいる。
さらには、のちに産みだされるコミケへとつながる、全国のマンガ愛好家ネットワーク「ぐら・こん」のページや、評論、インタヴュー、海外マンガ紹介など、マンガ以外の記事も充実していた。
商業的に成功していたとは言いがたく、発行されていた期間はそれほど長くはない。71年に休刊し、73年に1号だけ復刊された。後継誌は「COMコミック」。姉妹誌としては、「レディースコミック」の嚆矢とも言える「月刊ファニー」や、幼年むけの「てづかマガジンレオ」があった。
もうひとつの伝説的なマンガ雑誌「ガロ」と並べられることも多いが、「週刊漫画アクション」「ヤングコミック」「プレイコミック」「ビッグコミック」などの青年誌の創刊期や、劇画系の雑誌刊行などと「COM」の創刊は重なっており、マンガの青年化という観点からも興味ぶかい雑誌だ。
また、のちのニューウエーブと呼ばれる潮流を準備した面もあり、刊行期間は短かったものの、この雑誌の失敗は、その挫折によってさまざまな種子をまいたと言える。
米沢嘉博記念図書館での展示を監修するのは、『COM 40年目の終刊号』(朝日新聞出版、2011年)を編集した霜月たかなか氏。霜月氏は『コミックマーケット創世記』
(朝日新聞出版、2008年)の著者でもある。
『COM 40年目の終刊号』に掲載された原画や、さまざまな当時の貴重な資料が展示される予定。関連トークイベントも2回予定されているので下記のリンク先で確認してほしい。
なお、この展示の直前までは「武富健治の世界−『古代戦士は二ワット』から『鈴木先生』まで−展」がひらかれており、最終日の2012年1月29日には、装丁家の関善之氏による関連トークイベント「マンガのデザイン−『鈴木先生』を中心に−」がおこなわれる。関連トークイベントとしては最後のものなので、展示をまだ見ていない人はこの機会に訪れてみてはいかがだろうか。
伝説の雑誌「COM」:コミックス×コンパニオン×コミュニケーション展