「平等のためのマンガ・プロジェクト」(Comics for Equality、略称ComiX4=)は、ヨーロッパにおける人種差別や外国人恐怖症、不寛容などと闘うため、2012年から開始されたプロジェクトだ。

EU圏が拡大されるにつれ、圏内における人の移動が活発になっただけでなく、圏外からの移民も増え続け大きな問題となってきている。

この問題を解決する鍵は複数文化間の相互理解と対話にあるという信念のもと、「平等のためのマンガ・プロジェクト」では、EUへの移民および移民第二世代を対象に、「ステレオタイプ」「移民のストーリー」「人種差別に対する闘い」という3つのテーマでマンガ作品を募集して、それぞれのカテゴリで賞を授与しウェブ上で公開したり書籍化したりする予定だ。作品の応募はウェブ上で直接アップロードする仕組み。

プロジェクトを推し進めているのは、以前ここでお伝えした「第6回アフリカ・地中海マンガ賞」主催者であるイタリアとアフリカの文化交流を進める非営利団体「アフリカと地中海」(Africa e Mediterraneo)で、EUの「基本的権利と市民権プログラム」(Fundamental Rights and Citizenship Programme)から公的助成を受けている。

「第6回アフリカ・地中海マンガ賞」が主にイタリアとアフリカ諸国を対象としていたのに対して、今回の「平等のためのマンガ・プロジェクト」では、イタリアと東欧諸国(ブルガリア、エストニア、ルーマニア、ラトビア)が主な対象とされている。

「差別を取り扱ったマンガ」と聞いて、道徳の授業で読まされるような啓蒙的なマンガを想像するかもしれない。しかしながら実際に読んでみると、エッセイマンガの延長のような作品や、ルポルタージュマンガの一種、あるいはシュールで寓意的なマンガなど、様々なタイプの作品が投稿されている。いずれの作品にせよ一読して感じることは、安易に感動的な物語に回収されず、しかも作者と問題の距離がきわめて近いことだ。作者自身が移民である以上、それは当然のことなのだろう(ただし作品の内容は必ずしも本人の体験談とはかぎらない)。

日本におけるマンガと(広義の)差別問題を扱った『差別と向き合うマンガたち』(臨川書店、2007年)のなかで、共著者の一人である吉村和真氏は「マンガを用いて〔差別を:引用者注〕伝える」ことと「マンガとして〔差別を〕伝える」ことを区別していた。それに倣って言えば、これらの作品は「マンガと共に差別を生きる」作品だと言えるかもしれない。

第1回目の賞の締め切りは2013年6月30日。それぞれのカテゴリについて、審査員と一般投票により2名ずつが選ばれ、受賞者には賞金1000ユーロが贈られる。その他の細かな規定については募集要項(PDF)を参照してほしい。

「平等のためのマンガ・プロジェクト(ComiX4=)」[ホームページ]

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