クラウドファンディング(Crowd Funding)とは、あるプロジェクトに対してインターネット上で不特定多数の人々から資金調達することをいう。各プロジェクトの目的に応じて、リターンを求めない「寄付型」、作品やイベント招待などのリターンがある「購入型」、金銭的リターンを想定する「投資型」などのタイプがある。米・英国を中心にして、音楽やチャリティ支援などを発端に2000年半ばごろからプラットフォームが開設され、近年は様々なジャンルに特化したものや、リターン・タイプの多様化が進んでいる。それに呼応して個人や小規模なプロジェクトの立ち上げと支援が活発になりつつある。国内では「CAMPFIRE」や「READYFOR?」、アートに特化した「マイクロメセナ」、「モーション・ギャラリー」などのプラットフォームが知られている。

今回は、このクラウドファンディングを活用して資金を募っている、
アーカイブ/保存プロジェクトの事例を2例紹介する。米国のクラウドファンディングには「Indiegogo」(2008年開設)と「Kickstarter」(2009年開設)という2つの代表的なプラットフォームがあり、前者は目標額に達しない場合でも確保できた資金を受け取ることができるのに対し、後者は目標額に届かない場合は資金を受け取ることができないという特徴がある。また、後者はアート、ゲーム、マンガ、フィルム&ビデオ、出版など文化的なプロジェクトが中心だ。

まず、Indiegogoで資金調達中の「歴史的フィルム・カラーのデータベース(Database of Historical Film Colors)」は、フィルム・カラー処理に関するデータベースを構築するためのプロジェクトである。チューリッヒ大学フィルム学のバーバラ・フレッキガー教授(Prof. Barbara Flueckiger)が代表を務め、基礎となる調査成果として、200種類以上のカラー処理に関する約400事例の情報をウェブサイト上で公開している。

フィルムのデジタル化の過程で、作品を左右する色の変換手法に寄与するワーク・フローや基準の策定を目指しているが、そのためには、研究者やアーキビスト、キュレーターらが情報交換したり閲覧できるプラットフォームとしてのウェブベースのデータベース構築と、著作権処理のために資金が必要で、目標金額はUS$10,000(6月10日現在でUS$8,320獲得。6月21日閉鎖)。支持者はUS$10から参加でき、支援額に応じてリターン方法が異なる。

Kickstarterを活用している「Videofreex がやってくる−テープを救え!(HERE COME THE VIDEOFREEX−Save the Tapes!)」では、1970年代に海賊テレビ放送で実験的な活動を行った集団「Videofreex」のビデオ・テープ保存とドキュメンタリー制作のプロジェクトを立ち上げている。目標金額US$15,000(6月10日現在でUS$10,155獲得。6月29日閉鎖)で、US$1から支援することができる。

プライベート・コレクションや小規模な活動など、重要であっても公的な援助を受けにくいプロジェクトは、これらのプラットフォームを使った資金の調達/支援が可能になった。日本国内でもメディアアートに関する個人レベルの貴重な資料の保存が課題にあり、クラウドファンディングが解決の糸口になるのではないかと考えられる。

Indiegogo
歴史的フィルム・カラーのデータベース(Database of Historical Film Colors)

Kickstarter Videofreex がやってくる−テープを救え!(HERE COME THE VIDEOFREEX−Save the Tapes!)
http://www.kickstarter.com/projects/1579219342/here-come-the-videofreex-save-the-tapes?ref=live

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http://mediag.bunka.go.jp/news/cat2/e3.html