ゲームの歴史は破壊的イノベーションの歴史である。アーケードゲームからコンソールゲーム、そしてモバイル・ソーシャルゲームへと、既存の市場や慣習に縛られないルールの破壊者が登場し、ゲームの定義を広げてきた。
では、破壊的イノベーションを実現する個人、そして企業には、どのような特性があるのだろうか。この難問に直球で取り組んだのが本書である。共著者の一人、クレイトン・クリステンセン氏はベストセラー『イノベーションのジレンマ』『イノベーションへの解』で知られているが、本書は「個人」を切り口に据えた点でこの2冊とは趣が異なっている。
本書の特徴はイーベイのピエール・オミダイア氏ら、約30名の企業幹部インタビューをはじめ、75カ国以上の500名を越えるイノベーター、5000人を越える企業幹部のデータを分析して「イノベータDNA」と呼ぶ5つのスキルを導き出している点だ。
その上で第一部では個人を対象に、第二部では組織やチームを対象に、イノベーションに取り組む方法について解説されている。また著者らが独自に算出した「世界で最もイノベーティブな企業ランキング」も掲載している。
もっとも、5つのスキルのうち最も重要なものは、天才的なひらめきなどではなく、一件無関係な事柄を関連づける力だという。さらにイノベーターと呼ばれる人々は、質問・観察・ネットワーキング・実験という4つの行動習慣を通して、関連づけの材料を入手していることが明らかになった。
また本書では巻末で、日常の生活習慣を通してイノベータDNAを磨くための具体的なヒントも提示されている。驚くことに13個のヒントのうち、9個までが子供と実施するものになっている。大人の常識を疑い、子供の自由な発想力や観察力に学べということだ。
ゲーム開発者は常に「過去に夢中になったゲーム」を最新技術でリファインしたいという誘惑にとらわれる。しかし、それだけでは破壊的イノベーションは起こせない。現状に閉塞感を感じている開発者や、経営者にお勧めしたい一冊だ。
『イノベーションのDNA』
著者:クレイトン・クリステンセン、ジェフリー・ダイアー、ハル・グレガーセン
翻訳:櫻井祐子
出版社:翔泳社
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