1980年にバロセロナに生まれ、現在はマドリッドを拠点とするフェラン・プラ(Ferran Pla)氏によるひとりアートユニットFeréstecの2つのオンライン展が、ベルリンをベースとするs/t
 
及びFach and Asendorf Gallery
 
で開催されている。s/tの展示は最終的に書籍としてまとめられることを前提にしたもので、2012年9月12日から11月2日まで作品が日々追加された。Fach and Asendorf Galleryでの個展は「Caprice Classic」と題され、3つの作品が展示されている。

Feréstecの作品の多くはMac OSXの標準ビューワーである「プレビュー」で複数の画像ファイルを開き、そのウィンドウをデスクトップ上で組み合わせ、それをスクリーンショットで撮影したものとなっている。画像は抽象的なパターンが多いが、スクロールバーなどGUIのパーツなどの具象的な画像もある。構成の仕方は様々で、複数のウィンドウを単に重ねたものから、ひとつのウィンドウのなかで複数の画像が重なっているもの、デスクトップの背景画像やその上に置かれたファイルのサムネイル画像などを作品の一部として利用したものなどがある。FeréstecはスクリーンショットというOSにデフォルトで組み込まれた機能を使って、ウィンドウ、デスクトップ、画像ファイルのアイコンなどを自由に組み合わせ、普段とは異なる平面をつくり、ブラウザのウィンドウ内のスペースに表示する。Feréstecの作品を見ていると、私たちはウィンドウというフレームやその内側のスペース、そしてデスクトップなどがそれぞれ示している平面性をさほど理解していないのではないかという気分にさせられる。

Feréstecはs/tの展示の導入にひとつの詩を載せている。そこには「グラフィカル・ユーザー・インターフェイスにおける静物画」「スクリーンショットのウィンドウのなかのスクリーンショットのウィンドウ」という言葉などと記され、最後に「そこには死がある」と書かれている。この詩は「スクリーンショット」を用いた彼の作品の性質を鮮やかに示している。スクリーンショットはウィンドウという可変的な枠やクリックすれば反応するアイコンを「静物画」に変える。しかし、スクリーンショットで撮られた画像は、デスクトップ上のアイコンとなりクリックに反応するようになり、ダブルクリックで開かれ、動的なウィンドウのなかの動かないウィンドウという入れ子状態で表示される。そして、スクリーンショットがそれに再び「死」を与えるが、それもまた…、といったようにこのプロセスは、デスクトップ上では終わりがない。だから、「書籍」としてまとめられるときが、「スクリーンショット」の作品が真の「死」を迎えるときとなる。Feréstecの作品が「ページ」という平面でどのように展開されるのか、楽しみである。

Feréstecのs/tでの展示
http://www.sametitled.org/ferestecforst/

Caprice Classic
http://fa-g.org/ongoing/ferestec-capriceclassic