マンガの直筆原稿やイラストなどの原画資料(以下、原画)は一義的には雑誌や単行本を発行するための「版下」ですが、近年ではしばしば美術館や博物館の「展示物」となり、マンガ研究における「分析対象」として着目する動きもあります。
一般に、原画は作家やその家族、プロダクション、出版社などのもとで保存されますが、さまざまな事情によって紛失、廃棄、売却される事例はあとを絶ちません。また、古い原画の場合は、物理的に劣化することも多々あります。原画が散逸したり劣化したりするケースは、今後ますます増加していくものと思われます。
このような原画を救済する役割として注目されているのが、全国で増加する原画収蔵施設の存在です。ここでいう原画収蔵施設とは、1990年代以降に日本各地に開館した、地域出身などの特定の作家、あるいはマンガ文化全体を扱う施設(マンガ関連施設)の中でも、原画を何らかの形で収蔵している施設を指します。公共の施設に原画が収蔵されることで、体系的かつ公共的なアーカイブの構築に近づくと考えられますが、「どこの施設に、どのような原画が、どのくらい収蔵されており、どのように活用されているのか」という各施設の実態を体系的に明らかにする調査は少ないのが現状です。
そこで、本調査は原画収蔵施設を対象にインタビュー調査とフィールド調査を行い、原画の収蔵と活用の実態を調査しました。
【調査実施体制】(敬称略)
プロジェクト統括 | 吉村和真(京都精華大学マンガ学部 教授) |
研究員 調査、プロジェクトのコーディネート |
石川優(大阪市立大学都市文化研究センター)
西原麻里(関西大学社会学部 非常勤講師) |
【調査対象施設】(敬称略、調査実施順)
京都国際マンガミュージアム(京都府京都市)
北九州市漫画ミュージアム(福岡県北九州市)
横手市増田まんが美術館(秋田県横手市)
川崎市藤子・F・不二雄ミュージアム(神奈川県川崎市)
【有識者へのインタビュー】(敬称略、インタビュー実施順)
里中 満智子(マンガ家)
森 晴路(株式会社手塚プロダクション 資料室長)
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本報告書は、文化庁の委託業務として、森ビル株式会社が実施した平成25年度「メディア芸術情報拠点・コンソーシアム構築事業」の成果をとりまとめたものです。 本報告書の内容の全部又は一部については、私的使用又は引用等著作権法上認められた行為として、適宜の方法により出所を明示することにより、引用・転載複製を行うことが出来ます。