オリア・リアリナ(Olia Lialina)氏の新作GIFアニメ《Summer》(2013)が公開された。夏の青空を連想させる青から白へのグラデーションを背景に、女性がブランコに乗っている様子がGIFアニメで描かれている。リアリナ氏はネットアートの初期から活躍するとともに、Web1.0時代のウェブ上の表現を考察する「デジタル・フォークロア」の活動を通してGIFアニメにはやくから注目してきた。

《Summer》は決してなめらかでない動きを示すGIFアニメのなかでも、そのアニメーションがとてもぎくしゃくしている部類に入るものである。その理由はアドレスバーのURLが次々と変わっていることに関係している。なぜなら、《Summer》はGIFアニメなのだが、ひとつのURLにGIFアニメを構成する21コマの画像データがすべて置かれているのではなく、コマのデータが21のサイトに分散して置かれているのである。GIFアニメを動かすためには21のサイトに次々アクセスする必要があるため、通信環境によってアニメーションのなめらかさが異なるようになっている。また、ひとつのファイルとしてデータがまとまっていないので、《Summer》はGIFアニメでありながら、「GIFファイル」としてダウンロードすることもできなくなっている。

キュレーターのマイケル・コナー(Michael Connor)氏は、リアリナ氏が過去のインタビューで技術的環境によって作品の見え方が全く変わってしまったと述べていることに注目した記事を書いている。過去の接続スピードを基準にしてつくられた作品《My Boyfriend Came Back from the War》(1996)を現在の環境で見ると作品が「スッと」表示されてしまい、当時あった「タメ」のような感覚が消えてしまっていると、リアリア氏は述べている。《My Boyfriend Came Back from the War》は技術的変化を考慮していなかったがゆえに予期せぬ変化を被ることになったが、《Summer》はネットアートが作品単体ではなくそれを取り巻く技術的環境も含めた体験であることを示していると、コナー氏は指摘する。

21ヶ所のサーバから送信される複数のデータでひとつのGIFアニメを構成していく《Summer》は、通信スピードやブラウザのサイト接続切り替えが速くなればなるほど、そこにあたかもひとつのGIFアニメがあるように見えてくるだろう。現在は接続スピードが充分ではないためサイトのデータと映像とのあいだで「多対1」の接続を行うと、画像の切り替えにズレが否応なく発生してしまう。だが、やがてこのズレが生じなくなるような技術的環境が達成されるだろう。データと映像の対応が「1対1」から「多対1」へ移行した際に生じる「複数の場所から送られてきたデータから構成されたひとつの映像」は、多数の端末間で通信を行うP2P型ネットワークが「1対1」対応に基づいたクライアント-サーバ型ネットワークとは異なる未来を示すように、映像に新たな可能性をもたらすはずである。リアリナ氏のGIFアニメ《Summer》はネット上の作品が技術的環境にあることを示すだけでなく、少し未来の環境における映像のあり方をも見せてくれている。

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《Data Centers Grand Tour (This Data Belongs Here)》が示す地球の上の「データの場所」(「1対1」対応の例として)

http://mediag.bunka.go.jp/article/data_centers_grand_tour_this_data_belongs_here-915/

 

《Summer》

http://art.teleportacia.org/olia/summer/