NPO法人国際ゲーム開発者協会日本は2015年11月13日と12月3日の2回にわたり、スクウェア・エニックス(東京都新宿区)でセミナー「効果音ベストプラクティス(前・後編)」を開催した。セミナーはSIG-Audio(オーディオ専門部会)によって企画運営され、ホームページ上では講演資料も公開されている。

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会場のスクウェア・エニックス会議室には数多くのクリエイターが参加した

【第一線のサウンドクリエイターが手の内を披露】

ゲームに必須の効果音だが、制作マニュアルは存在しない。制作テクニックが明かされる例も極めて珍しいのが実情だ。前編ではSIG副世話人でバンダイナムコスタジオの中西哲一氏とソノロジックデザインの牛島正人氏、後編ではタイトーの石川勝久氏、ATTICの中條謙自氏が講師として登壇し、各々のクリエイターが蓄えてきた「秘伝」が共有された。

中西氏は充実したサウンドライブラリの構築と、どのようなオーダーにも迅速に対応できる柔軟性を確保することで、新たな効果音の表現方法の研究に時間を割きたいと語った。その上でシンセサイザーをデモしながら効果音を作成するプロセスを紹介。ゲームオーディオに必須となるループ表現(同じ音素材を何回も繰り返して再生すること)を行う上で、音素材を効果的に繋げる手法についてもあかした。

牛島氏は波形エディタから効果音を作成するやり方について紹介した。実際の開発現場では効果音作成にシンセサイザーを使用することが一般的だ。しかし、牛島氏は解析情報から音を調整したり、デジタル信号処理の基本について学ぶことで、効果音の作成や調整について広がりが出てくると解説。シューティングゲームで必須となる銃声音の作成方法についても、ツールを実演しながら紹介した。

【ゲーム業界内外のクリエイターが交流】

タイトーのサウンドチーム「ZUNTATA」で入社以来、一貫して活動を続けてきた石川氏は、シューティングゲームにおける効果音の特性について解説した。攻撃音や爆破音など、さまざまな効果音が重なる上に、BGMの評価も高い同社のシューティングゲームでは、強弱のメリハリが重要になる。特にアタック音(音の鳴り始め)が重要だとして、ビーム音の制作プロセスなどを紹介した。

中條氏は60分の講演を、ほぼすべて普段の効果音制作のやり方を紹介するというユニークなスタイルで「手の内」をさらした。さまざまなツールで効果音の素材を制作し、音楽制作プラットフォームに配置してバランスをととのえ、ブラッシュアップしていく過程を解説を加えながら実演。実際の作業スタイルを直接見ることのできた参加者から、大きな拍手が送られた。

セミナーには前後編でのべ200人以上が参加。プロのゲームオーディオ制作者だけでなく、学生や遊技機向けのサウンドクリエイターなど、幅広い層がみられた。後編では終了後に懇親会も開かれ、多くのクリエイターが交流を楽しんでいた。