2011年12月14日、独立行政法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)が平成25年度打上げ予定のH-IIAロケットに相乗りする小型副衛星として、多摩美術大学と東京大学が恊働で開発中の「芸術衛星 INVADER」が採択された。「芸術衛星 INVADER」は、久保田晃弘氏(多摩美術大学情報デザイン学科教授)がプロジェクトリーダーをつとめる「ARTSAT:衛星芸術プロジェクト」の一環として開発中の超小型衛星だ。

「ARTSAT:衛星芸術プロジェクト」は衛星を「宇宙と地上を結ぶメディア」と捉え、メディアアートやデザイン、エンターテインメントへ応用することで、衛星のオープンかつソーシャルな運用を可能にすることを目指す。2010年より、「衛星音楽」「衛星家具」「衛星ゲーム」「衛星API」などの衛星芸術ミッションをおこなっている。「芸術衛星 INVADER」はこのような衛星芸術ミッションをさらに発展させるための「芸術衛星」の第1号だ。

計画されているミッションには、衛星データを使った作品やアプリケーション制作、衛星データAPI設計、衛星をメディアとしたインタラクティブ作品制作などがある。正式な打ち上げが決まったことを受けて、衛星本体の開発や試験、地上局の設置、関連プログラムやプロダクトの設計に本格的に取り組むようだ。

宇宙開発は、高度な科学技術が凝縮されたものだが、本プロジェクトは「衛星を専門家のための『特別なモノ』から、市民の日常の中の『身近なコト』へと変えていく、『みんなの』衛星プロジェクトを目指す」とあるように、ある種のDIY精神にも支えられている点が興味深い。メディアアートが特権的な存在であったデジタル・テクノロジーによる表現を経て、日常生活に引きつけた表現や商業利用など広範に展開してきたことを反照させるような、あたらしい総合的な展開にも思える。宇宙を舞台にした科学技術と芸術表現のコラボレーションにDIY精神が加わることで、メディアアートの新しい表現手法が開拓されることを期待する。

独立行政法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)プレスリリース

http://www.jaxa.jp/press/2011/12/20111214_sac_subpayload_j.html

ARTSAT:衛星芸術プロジェクトH-IIA相乗り決定!! プレスリリース

http://artsat.jp/wp-content/uploads/docs/press_release.pdf

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